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【映画『渇水』6/2公開!】磯村勇斗に伊藤さとりがインタビュー! 『渇水』のこと、日本映画への熱い思いを語る【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は6/2公開の『渇水』から磯村勇斗さんが登場し、伊藤さとりさんがインタビュー。映画好きのお二人のトークとなりました!


生田斗真×白石和彌×髙橋正弥がタッグ、6/2公開『渇水』

Ⓒ「渇水」製作委員会 

【あらすじ】日照り続きの夏、市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は同僚の木田とともに来る日も来る日も水道料金を滞納した家庭を訪ね、水道を停めて回っていた。妻(尾野真千子)や子どもとの関係もうまくいかず渇いた日々。県内全域で給水制限が発令される中、岩切は二人だけで家に残された恵子(山﨑七海)と久美子(柚穂)の幼い姉妹に出会う。父は蒸発、一人で姉妹を育てる母親(門脇麦)も帰ってこない。困窮家庭にとって最後のライフラインである“水”を停めるのか否か。葛藤を抱えながらも岩切は規則に従い停水を執り行うが…。

2023/日本/100分
監督:髙橋正弥 原作:河林 満『渇水』(角川文庫) 脚本:及川章太郎
企画プロデュース:白石和彌
出演:生田斗真 門脇麦、磯村勇斗 山﨑七海、柚穂、宮藤官九郎、宮世琉弥、吉沢健、池田成志、篠原篤、柴田理恵、森下能幸、田中要次、大鶴義丹 尾野真千子

配給:KADOKAWA

映画『渇水』公式サイト


滞納者の水道を停めることも仕事、『渇水』が描く社会性のあるテーマにも惹かれた

伊藤 この作品を引き受けようと思った魅力はどこですか?

磯村 水道局員を軸にして物語が進んでいく中に、ちゃんと格差社会などの問題提起もしていてそこの視点が新しいなと思って。これはやりたいな、というのと、最後の生田さん演じる岩切のちょっとした「小さな革命」がとても今の世の中に必要だなと思って、共感したんですね。それでやりたいなと。

伊藤 生田斗真さんのバディ役、初共演はどうでした?

磯村 楽しかったですね。すごく優しくて。本当にお兄さんのように接してくださっったので。先輩と後輩という、役と同じような感じで現場でいられたので。それが映像に、映画になっているという感じです。

伊藤 なんかね、作品を観ながら暑い時期に撮ったのかなって雰囲気があったんですよ。あれは実際に夏?

磯村 一昨年の9月ですね。まだ暑くてじめじめしていて。台風のシーズンでもあったので雨がすごい降ってたんですよ、『渇水』なのに。みんなで「今日どうするか」と話しが出つつも知恵を振り絞って、乾いている風に上手く撮って。

伊藤 この2人の行く所々が、社会問題にもなっているシングルマザーの貧困だったりも描かれていたじゃないですか。そこの子役の子たちもめちゃくちゃ上手かったですよね。

磯村 そうなんですよ、あの子たちはしっかりしていたんですよ。しかも台本を渡されていないんですよ、二人とも。事前にその日のシーン前に監督が説明しにいって、セリフをちょっと前に渡されて、覚えてっていうやり方でやっていたので。監督的にも子供らしさ、自然体で居てほしいっていうところを追求していたと思いますし。でも子供たちが、「あのー、次のシーンなんですか」「このあと展開は」とか聞いていて。

伊藤 ちゃんと聞くの(笑)

磯村 ちゃんと聞くんですけど、僕たちは言わないでと言われていたので、「ごめんね言えないんだよ」、とそこは距離感を置いていました。

伊藤 じゃあアイス食べるのもその時に知るの? 当たりはずれのくだりがすごく可愛くて。あそこも子供たちは台本は貰ってないの?

磯村 僕らはもちろん全部知っているんですけど、だからこっちで誘導もしなきゃいけないし、でも子供らしさも必要なのでちょっと違うところにセリフが行っちゃったりしたら合わせて乗っていくっていう。楽しかったです、非常に。

Ⓒ「渇水」製作委員会

印象的なシーンや現場の様子は? いい作品にはいいスタッフやキャストが集まる

伊藤 磯村さんは色んな映画に出て、自分でも監督したり、映画観るの大好きじゃないですか。今回の現場でこれは面白かったなという演出方法や役者さんの演技はありましたか?

磯村 髙橋監督は役者たちにものすごく寄り添ってくださる方で。だから疑問に思ったところとかも相談出来ましたし、とにかくみんな平等にやっていこうというスタイルだったんです。俳優部として参加していますけど、俳優部は俳優部でただの部署です、くらいの割り切り方で。クランクインでよく俳優さんが挨拶するじゃないですか。

伊藤 はいはいはい。

磯村 そういうのは一切ナシで、という監督の要望で。

伊藤 えっ!

磯村 そういうところとか、あぁいいなと僕は思いましたね。

伊藤 じゃあクランクアップもなし?

磯村 クランクアップはあったんですよ(笑)。そこはあるんかいって、突っ込んじゃったんですけど(笑)。最終的にいいチームになっていたからひとことください、っていう事だったと思うんですけど。

伊藤 白石和彌さんだったり、髙橋監督も助監督時代からのお付き合いのある人もいるから、宮藤官九郎さんとか色んな方、こんな人までという方がちょろちょろ出ているじゃないですか。豪華ですよね。宮藤さんどうでした?

磯村 宮藤さんはその時が初めましてだったんですけど、そこに住んでるのかなってくらい、オーラを消していて、飢えている人っていうかお金がないです、という癖のある感じで。本当に宮藤さんすごいな、確かにこういう人いるよなと見てました。

伊藤 特に忘れられない撮影シーンとかありましたか?

磯村 最後の公園のシーンとかは僕の好きなシーンでもあり、撮影していてものすごくいいシーンだなと。生田さんのいきいきとした岩切の顔と子どもたちの表情が、現場で見ていてもいいなと、そこがすごく好きですね。

伊藤 子供たちは脚本が無くて、あそこのシーン撮るといったら……リハが出来ていないということですよね。

磯村 リハはないですね。監督が説明をしていたんで、なんとなく彼女たちの心境の変化は伝えていたと思うので。けっこう撮影の最後のほうだったんですよ。だから彼女たちも何か感じて。特にお姉ちゃんの山﨑(七海)さんはすごく頭がよくて、理解していたと思います。

伊藤 あの子の目力がねすごい。ということはあれは一発撮り?

磯村 最初一発撮りでやって、ハンディでまわしていたんで。

伊藤 ってことですよね。けっこうカメラの台数があった?

磯村 いや1台で、基本フィルムだったんで1台でまわして。

伊藤 それを聞くとさらに面白い! この映画に関わって、ご自身がこういう映画作りたい、というネタは見つかりましたか。いつもネタ帳を書いているとおっしゃってましたけど。

磯村 いやー、『渇水』は脚本が素晴らしいんでね、やられますよね。いい作品というのは、素敵なスタッフ、キャストも集まるし。そういう脚本を書けなきゃいけないし、そういうテーマを見つけないとなと改めて感じました。ストレートに社会的なテーマを扱う方が好きなんですけど、それをストレートに描くわけではなく、今回で言うと水道局というネタを挟むだけで人間模様がしっかり描かれて。学んだというか、やり方が無限大だと思いましたね。

伊藤 物語の中で、木田さんのことは深くは描かれていないじゃないですか。でも自分自身である程度は盛り込んでいるんですよね。どういうところを気にして演じていましたか。

磯村 岩切ともともと見えるものは同じと感じていて。水を停めるという事に疑問を抱いています。でも木田には恋人もいて生きるために働いてお金を集めなければいけない、どこか仕事として割り切っている、ちょっと冷たい部分もあるんだろうなと思ったので、岩切とは一緒に見えるけど交わらないところで動けたらと思っていました。

伊藤 滞納者のお兄さんがお金を目の前で落として拾わせるところとかもしっかり映るじゃないですか。どっちかっていうと、今回の磯村さんの役ってリアクション的なところを特に拾われてましたよね。

磯村 そうですね。言葉がないところ「……」が多かったから、難しかったですよね。表情、目とかの動きで伝えるというのは、難しいです。でもそこで起こることを素直に受け取って、岩切さんの対応とか、奥で考えてることを意識しながら見守っていました。

伊藤 どうですか? 初号で見て作品自体の出来上がりをご覧になって。

磯村 すごく爽やかでしたね。“水”がそうさせてると思うんですけど。それなのにテーマとしては、けっこうグサッとくることを扱っているんで、不思議な感覚になりましたね。ちゃんと最後は心が潤っていくというか、希望を抱ける作品になったので早く届けたいなって思いました。

Ⓒ「渇水」製作委員会

磯村さんが思う輝いている人、もっと自分が輝かせたい部分は?

伊藤 磯村さん、GLOWのテーマが「輝き」なのですが、輝いている人はどういう人だと思いますか?

磯村 自分の好きなことをしっかりやれてる人じゃないですかね。この仕事に限らず、好きでやってる人たち、絵を描く人とかも本当に好きだから描いているときのエネルギー量ってすごいじゃないすか。それが輝きに見えるし、例えば接客業をしている人とかも人と話すことが本当に好きなんだなとか、伝わるとき輝いて見えるんで、役者も好きで芝居してる人の方が、輝いて見えます。

伊藤 最近はこの人が輝いていると思った人は?

磯村 最近ですか。うわー輝いてんなって、この人輝いていたってねー、刺激受けたわーこの人って、しびれたなーって人ですよね。※妙に早口になる

伊藤 今シンキングタイムなんですね(笑)

磯村 僕が何をやったかも忘れちゃって(笑)

伊藤 『東京リベンジャーズ2』とかも出たんですよね。荻上直子監督のも(『波紋』)、藤井さんともまた組んだんですよね(藤井道人監督『最後まで行く』)。

磯村 筒井真理子さんとか、めちゃめちゃ輝いてます! 絶対お芝居好きじゃないですか。荻上組の『波紋』で一緒になったんですけど。

伊藤 大好きなお姉さま!

磯村 素敵です。始めましてだったんですけど、元々映画で見ていてすごい女優さんというのはわかっていたんですけど、現場入って筒井さん素敵だなって思ったのはやっぱりすごい芝居が好きで愛してるからだろうなって、現場で感じまして。

ジャケット6万7100円、シャツ2万7500円(ともにニードルズ/ネペンテス)

伊藤 磯村さんだって輝いてますよ。

磯村 自分ではわかんないっすよ。鏡を見て輝いてるなーって思わないです(笑)。そう思ったらちょっとまずいですよ(笑)。そんなナルシストじゃないんで。

伊藤 自分の中で、ここは輝かせたいところはどこですか。

磯村 ちゃんと自分に興味を持つことができていないのが短所かもしれないですね。前からなんですけど、ちゃんと自分を理解してあげよう、そうすることで見えてくることもあるんだろうなって最近思い始めたんです。

伊藤 何でですか、何がきっかけで?

磯村 前までは、まず自分なんてどうでもいいと思ってたんですね。役者ならば、役のことを考えていれば自分は後回し、自分いらないなみたいに、思っちゃうときあったんすよ。偏りすぎて思考が。でも今はちゃんと自分を愛せないと人を愛せないんじゃないかというところにたどり着いて。まずは1回自分をちゃんと労わってあげて、愛してあげることから始めていこうかなと思ったんですね。

伊藤 自分が疲れてても無理に動いちゃうタイプ? どうやってすり減ったエネルギーを足してたんですか。

磯村 勢いだったと思いますよ。何とかなるでしょっていう精神で、乗り越えてきたと思うんですよね。それじゃあ、自分が崩れてくって、気付いたんですよね。そこからちゃんと自分と見つめ合いながら、体と心を大切にしながら、役者をやっていこうと考えられるようになったんで。まだ成長段階なんですけど、そこが僕には足りないとこですね。

伊藤 サウナという趣味もありますよね、ストイックなほどに。映画を作ること、役者もやる。逆に忙しくないタイミングってあるんですか?

磯村 そこはやっとしっかり事務所と話して、コントロールできるようになったかもしれないすね。マネージャーとも相談しながら、働きすぎないっていうところは意識するように。ブレークタイムをちゃんと作ってあげて、次の仕事、でブレークタイム。みたいのをやれるようには心がけております。

現在30歳、この先の展望は? 「海外進出もいいけど、まずは日本で勝負したい」

伊藤 この若さで本当に面白い監督たちと仕事をしているじゃないですか。次はどうなるのじゃ、って思ってるんですよ。こうなっていきたいみたいなのはあります?

磯村 いや自分でもどうなるかわからないのが面白いのもあったりしつつも、30になって、40歳まで10年間あるんで、なんかずっと変わらないんじゃないかなって。雰囲気とか、容姿とか。渋くなりたいという自分もいるんですよ。ひげとかが似合う、ブラピがどんどん渋くなっていくような感じで、めちゃくちゃ顔綺麗だったのに、今いい年の重ね方をしてるじゃないですか。ディカプリオとかも。そういうのを見てると、自分もいい歳のとり方をしたいなと思うんですけど、方法は全然わかんないんで、やっぱりどれだけ人生を豊かに過ごしていくかだなと。それが多分、結果的に役者業に全部繋がってくると思うので。あと10年間で人の出会いとか、この仕事以外でも、クリエイティブなことにも挑戦していきたいですし、もうちょっと人間的に豊かになって、それを全部役に集約していきたいなって。

伊藤 ブラピもプロデュースとかもやってますよね

磯村 やってるんですよ。(自分も)やりましょう! 新しくやっていきたいことも今、いくつかあるんで。

伊藤 プロデュースと監督、海外進出?

磯村 海外進出も考えていますけど、やっぱり日本のもので勝負したい欲がすごく強くて、日本の作品、母国語でっていうのは、あるので。土台をどう作っていくかは、『PLAN 75』の早川(千絵)さんと話したり、そこに参加していた方で世界でやっている人もいるので話したりして。英語を習得して海外でやってもいいんじゃないっていう人もいますけど、自分たちが生まれた場所の作品を世界にどんどん発信していく力をつけた方が、後輩たちのためにもなるから。まずは日本のしっかり土台を作れる一員としてやっていく方が、面白みがあると思ったりしてます。

伊藤 30にしてもう後輩のことも考えている。きっかけは?

磯村 山田孝之さんとか斎藤工さんとかがそういう思考でいろいろクリエイティブなことやってるのを見てると、ちゃんとバトンを受け継いていこうと。ちょうど間の世代だと思うんですよ。今20代のいい俳優さんたくさんいらっしゃるんで。彼らがもっとのびのびと自由にできる土壌を作ってあげるっていうのが役目なのかと感じたり。

伊藤 2人とも確かに日本の映画界の足りないところも見てますよね。

磯村 厳しさもわかるので。海外で英語を身につけたとて、アジアの顔なんで、役も限られてくると思うんですよ。そこを切り開くっていう面白さもすごいあると思うんですけど。それよりは、今できることを日本で広げる方が、成功の確率的には高いと思っています。

伊藤 『別れる決心』でパク・チャヌク監督と会って話したりしてましたしね。海外の方との出会いもあって。

磯村 出会い、それはすごいありがたいですね。ご縁に恵まれて、だからこそ、悔しいんでしょうね。

伊藤 日本映画の俳優として。

磯村 もちろん世界に行っている監督たちもいますけど、普通にアメリカの映画とか日本でたくさん公開されたり、来日したらワーッてなってたり、韓国も然りですけど。日本がそれをできたら、もっと日本映画界が輝かしい世界になっていくんだろうなって、思うんですよね。応援したいっていう意味もあって。

伊藤 最後に一つだけ、いつも聞いちゃうけど、最近まで観た中でこういう映画撮りたいっていう作品に出会いました?

磯村 もう『バビロン』ですよ。あれだけのエンターテイメントを見せられたら、敵わないって思っちゃいますよね。ここまでやっぱり、技術、演技、物語性含めて、ドーンとでっかいものを落とされた気がして。そしたらインドで『RRR』やってるんですよ。2大、ハリウッドとインドの超大作がこう来たら、見てちょっと苦しくなりましたし、もちろん面白かったっていうのがあって。なんかいつかそういう作品が日本で出たら、すごい輝かしいなっていうのを想像しちゃいました。

伊藤 わー作ってほしい!! 


【磯村勇斗さんPROFILE】

いそむらはやと:1992年9月11日生まれ、静岡県出身。’15年に『仮面ライダーゴースト』、’17年NHK連続テレビ小説『ひよっこ』で注目を集める。ドラマ『きのう何食べた?』『サ道』『恋する母たち』、映画『東京リベンジャーズ』『ビリーバーズ』など多数出演。現在、映画『最後まで行く』、『波紋』が公開中。6/30からは『東京リベンジャーズ2 ~血のハロウィン編 決戦』公開。

磯村勇斗インスタグラム

磯村勇斗OFFICIAL SITE

撮影=梶田麻矢 スタイリング=笠井時夢 ヘア&メイク=佐藤友勝 

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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