【映画】7/14公開『星くずの片隅で』 話題の香港女優 アンジェラ・ユンに伊藤さとりがインタビュー! 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】
執筆者:伊藤さとり
映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は7/14公開の香港映画『星くずの片隅で』。香港アカデミー賞10部門にノミネートされ、香港映画の新しい世代を担うラム・サム監督がコロナ禍の香港を舞台にひたむきに生きる2人を描いた物語。今回は注目の女優、アンジェラ・ユンさんに伊藤さとりさんがインタビュー。なんと、通訳を務めてくださったリム・カーワイ監督もたまに参加します!
7/14公開『星くずの片隅で』
【あらすじ】2020年、コロナ禍で静まり返った香港。「ピーターパンクリーニング」の経営者ザク(ルイス・チョン)は、車の修理代や品薄の洗剤に頭を悩ませながら、消毒作業に追われる日々を送っている。リウマチを患う母(パトラ・アウ)は、憎まれ口をたたきながらも、たまに看病にくるルイスのことを心配している。
ある日、ザクの元にド派手な服装の若いシングルマザーのキャンディ(アンジェラ・ユン)が職を求めてやってくる。まともな仕事をしたことがなさそうなキャンディだが、娘ジュー(トン・オンナー)のために慣れない清掃の仕事を頑張りはじめる。しかしキャンディがジューのために子供用のマスクを客の家から盗んでしまい、ザクは大事な顧客を失ってしまう。幼い娘を抱え、まともな暮らしもできずにいるキャンディをみて、ザクはもう一度だけチャンスを与える。心を入れ替え仕事に打ち込んでいくキャンディに、心惹かれていくザク。そんな中、ルイスの母が急死する。葬儀に向かうザクを送り出し、ひとりでの仕事に張り切るキャンディ。しかしジューがうっかりこぼしてしまった洗剤をきっかけに、追い詰められたキャンディはちょっとした嘘を重ねていってしまう。それがザクと会社を窮地に追いやることになり…。
2022/香港/115分
監督:ラム・サム(林森 LAM Sum)
出演:ルイス・チョン(張繼聰 Louis Cheung) アンジェラ・ユン(袁澧林 Angela Yuen) パトラ・アウ(區嘉雯 Patra Au) トン・オンナー(董安娜 Tung On Na)
配給:Cinema Drifters、大福、ポレポレ東中野
『星くずの片隅で』はやっと女優として認められた作品
伊藤 日本には何度も来ているんですよね。
アンジェラ 覚えられないくらい来ています。私も、周りの人も日本が大好きだから、何度も遊びに来ています。香港の人は日本が大好き。
伊藤 私はユン・ピョウ(元彪)やジャッキー・チェン(成龍)世代だから香港が大好きです。アンジェラさんのことはオダギリジョーさんと共演されていてた『宵闇真珠』(2018)で拝見していました。
アンジェラ あー、演技が未熟で恥ずかしいです。
リム そんなことないですよね。
伊藤 そんなことないですよ。
アンジェラ そうですか(照)。
伊藤 モデルもされて演技もされていて。役者をやろうと思った理由や、やってみてどんなところが大変で、どんなところが楽しいですか。
アンジェラ 最初からモデルをしながら役者もしていて、TVドラマやミニ映画、ショートフィルムなど出演していたのですが、この『星くずの片隅で』でノミネートされてからやっと役者として認められるようになったと感じます。ファッションモデルのイメージが強いかもしれないけどずっとお芝居もしているんです。
アンジェラ モデルも役者も挑戦的な仕事なのですが、役者は人生経験や日常生活での観察などが役に反映されると思うし、色々なことが要求されます。ファッションモデルはキャラクターというか表面的な表現だったりするので、それぞれ違います。
伊藤 映画を観て、すごくファッショナブルで可愛くて。衣装については一緒に選んだりしたんですか。
アンジェラ キャンディは、香港のMK族、モンコックに集まる若い女性たちがいてそのイメージなんです。お金はあまりないし働いてなかったりするけど、生活を楽しんでいて、社会的には認められていない感じの人たち。派手な服装を好むけどお金はないのでどこかアンバランスだったりというキャラクターをイメージしました。映画ではファッショナブルだったりきれいめに映ったかもしれないけど、意図は、ずれを表現したかったんです。
伊藤 ということは、衣装はアンジェラさんが選んだんですか。
アンジェラ MKギャルの流行があるので、監督や衣装さんにSNSを見せてアイディアを出しました。低所得層の人がそれでもお洒落している感じなので、チープなものなんです。
伊藤 キャンディの役柄を表していて良かったです。
伊藤 シングルマザーや男性も母親の介護などがあり、社会問題が入っている脚本を読んでどうでしたか。
アンジェラ 香港は印象としては華やかですが、5人に1人くらいは貧困層。最近はそんな現状を描く映画が増えてきています。
伊藤 シングルマザーの役ですが、どうやってコミュニケーションをとりましたか?
アンジェラ 今回の作品はドラマチックな部分は少ないですよね。普通の日常生活を描いていて、それを面白くするためにも、お母さんと子どもの関係をいかにリアルに見せるかが大事だと思いました。一緒に遊んだり、家に遊びに行ったり。撮影に入る前から信頼関係を築き、お互いを好きになれるように努力しました。映像にそれが出ているなら、その努力のおかげ。彼女の家のものを小道具として部屋に飾ったりしているんです。撮影現場は大人でも人が多くて慌ただしくて独特の雰囲気の場所。子どもにとってはもっと大変だと思うので、ふだんと変わらない感じや怖くないよ、と感じてもらえるように、撮影現場でも遊んだりしました。
伊藤 素晴らしい!
アンジェラ 映画が終わる頃には、子ども専門の助監督ができそうと思いました(笑) 子どもは得意ではないけど、オンナーは大好き。撮影後も関係が続いています。
ルイス・チョンとの共演は運命的!
伊藤 ルイス・チョンさんとの共演はいかがでしたか。
アンジェラ 先生でアイドルのような存在! エージェントが同じ系列で、この映画を知ったのもルイスさんの推薦なんです。
伊藤 えー!!
アンジェラ 監督たちはルイスさんをイメージして脚本を書いたからルイスさんは出演が決まっていて、女優は決まっていなかった。そこでルイスさんが推薦してオーディションを受けに行ったから、制作会社はびっくり。なんでアンジェラを推薦するの、と。
リム そのくらいアンジェラは役者としてはまだ認められていなかったんです。
伊藤 それでオーディションに受かったんだからすごい。
アンジェラ 3回オーディションがありました。
伊藤 受かるためにしていたことはありますか?
アンジェラ 1度目のオーディションではまだ脚本は完成前だけどあらすじはあったから、シングルマザーを演じるのはわかっていたんです。貧乏かもしれないけど自由さも持っている役として、ちょっと派手な個性的な服を着て臨みました。
リム 監督たちはそのイメージがなかったのでその準備に感動して、衣装の色使いなどのヒントにしたと後に監督に聞きました。
伊藤 わー、アンジェラさんのベースのアイディアがあって、キャンディの髪型や娘ちゃんも華やかな感じになったんですね。
アンジェラ そうだと思います。
伊藤 美術も衣装もファンタジーだけど切ない物語になっていますね。
アンジェラ 実は1回目、2回目のオーディションに落ちていて。
伊藤 そうなんですか!?
アンジェラ 最終的に2人候補がいて私は第一候補ではなくて。クランクインしたらコロナ禍になり、第一候補の方が降板したので、私が3回目のオーディションを受けられることになり決まったんです。運命に感謝しています。ありがとうー※日本語で。
伊藤 あきらめないことも大事!
アンジェラ ずっとあきらめていませんでした。
輝きたいなら、枠を乗り越えて!
伊藤 女優さんやモデルをするにあたり大切にしていることはありますか?
アンジェラ 役者にとって大事なのは正解を感知する能力、センスだと思っています。世の中で起きていることを敏感に感じ取って表現すること。あとはあきらめないことや日々の努力も。特にこの作品ではそう思っていて。今まで作品に出てもそれほど注目されないけど頑張っていました。コロナ禍になって撮影が無くなり、会社が開催してくれた演技のワークショップが、ルイスさんと同じだったんです。二十数人いてけっこう欠席する人もいる中、私は毎回参加していました。それをルイスさんは知っていてオーディションに推薦してくれた。常に準備していないとチャンスが回ってこない、と実感しました。
伊藤 GLOWのテーマにちなみ、輝くためにしていること、輝いている人はどんな人かを教えてください。
アンジェラ まず、夢を持っている人は輝いていると思います。そして夢だけじゃなく努力を欠かさないこと。努力しない人もいるので、夢を叶えてから振り返るのがいいなと思います。女性は地位が低いし、こうしなければと型にはめられがち。輝きたいなら、枠を乗り越えることが大事だと思います。男性の意見は無視し、自分の心に従う。女性って男性が思うような感じではないから!(笑)
【アンジェラ・ユンさんPROFILE】
スカートはロイソプ.ガッカイ、ニットのベストはCAHNCEでともに香港のブランド。スニーカーはコム・デ・ギャルソン ガールとVANSのコラボ。
アンジェラ・ユン(袁澧林 Angela Yuen) 1993年10月25日生まれ、香港のモデル、俳優。2015年にモデルデビューし、一流ブランドの広告塔やアンバサダーに選ばれ、一躍トップモデルに駆け上がる。ファッション・シーンから注目を集めるだけではなく、峯田和伸が率いるロック・バンド「銀杏BOYZ」のシングルのジャケット、Vaundyの「Tokimeki」のMVに起用され話題となる。クリストファー・ドイルが監督、脚本、撮影監督した映画『宵闇真珠』(18)ではオダギリジョーと共演。『星くずの片隅で』で、2023年香港アカデミー賞(金像奨)最優秀主演女優賞にノミネートされている。
撮影=梶田麻矢
この記事を書いた人
邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。
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