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【舞台・ミュージカル】 子どもに夢を与える「ニッセイ名作シリーズ」秘話 無料招待で舞台芸術の素晴らしさを伝え続ける

日生劇場

日生劇場では、長年、子どもを無料招待する「ニッセイ名作シリーズ」を展開し、感性が豊かな若い頃から舞台芸術に触れる機会を作り続けています。この素敵な取り組みについて、日本生命保険・勝間雄弘さん、ニッセイ文化振興財団・大澤暢也さんにお話を伺いました!


【これまで累計800万人の子どもたちを劇場へ無料招待[ニッセイ名作シリーズ]】

日生劇場の外観日生劇場は今年開場60周年! 建築家・村野藤吾氏の代表作のひとつ。外観や内観の美しさにも定評がある。

「『ニッセイ名作シリーズ』は、日本生命保険の協賛によって全国の小学6年生をミュージカルへ無料招待する『ニッセイ名作劇場』と、中高生を対象にオペラを低価格で提供する『日生劇場オペラ教室』が前身です。2014年度からは『ニッセイ名作シリーズ』として演目や無料招待の対象を拡大し、日生劇場をはじめとする全国の劇場に、累計約 800 万人 の子どもたちを招待してきました。日生劇場が開場して60年という節目となる2023年には劇団四季を迎え、新たに小学校3〜4年生を対象としたミュージカルの公演をスタートしています」(ニッセイ文化振興財団・大澤さん)

「『ニッセイ名作劇場』が始まったのは、東京・日比谷に日生劇場が開場した翌年の1964年です。当時の日本は、高度成長期のまっただ中。物質的には豊かになりつつある時代でしたが、その一方で、「文化芸術に関しては欧米に比べて後れを取っているのではないか」という視点もありました。そこで当時の日本生命社長であった弘世現が、文化芸術への貢献として日生劇場の建設を決めたのです。単に劇場を建てるだけでなく、未来を担う世代に一流の演目を提供することで夢を与え、情操を育みたい……。そんな思いから、子どもたちの無料招待が始まりました」(日本生命保険・勝間さん)

「大人も鑑賞できる質の高い舞台を上演しています」

日生劇場でのトスカ公演NISSAY OPERA 2019『トスカ』 撮影:三枝近志 

ミュージカル、音楽劇、人形劇……と、上演する作品のジャンルは様ざま。オペラ『トスカ』や『ドン・ジョヴァンニ』、バレエ『白鳥の湖』『眠れる森の美女』といった名作中の名作も過去に上演されました。日本生命保険、日生劇場がしっかりと携わり、かなり前から作品選定を進めていると言います。「明確な選定基準はありませんが、“子どもが観て面白いもの”“メッセージ性があるもの”というのがベースにあります。でも子どもは一番厳しい観客なので、大人が観ても楽しめるクオリティがないと、飽きてしまうんです。なので“子ども向けにわかりやすく”アレンジするということはしていないんです」(大澤さん)

「子どもたちのダイレクトな反応も励みになる」

日生劇場での観劇

2023年から数年間上演予定の『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』 撮影:阿部章仁

ミュージカルではクライマックスの盛り上がるシーン、例えば対決のようなシーンでは手拍子や歓声などダイレクトな反応が。立ち上がってしまう子どももいるそう。「自然と反応があるのは『名作シリーズ』ならではの微笑ましいところなんです。開演前は賑やかにしていた子どもたちも、いざ始まると、静かに集中して観てくれます。観劇後に書いていただくアンケートにもいろんな感想があり、どれも楽しく拝見しています。劇中のキャラクターのイラストが描かれていることも結構あるんですよ。このシーンが印象的だったんだ、と拝見するのが楽しいです。とりわけ嬉しいのはやっぱり『もう1回行きたい』という声ですね」(大澤さん) 
観劇を終えた子どもたちが、劇場スタッフに「ありがとうございます!」「さようなら」と挨拶しながら帰って行ったり、舞台後の興奮でハイタッチしていく光景も見られました。

「舞台芸術に触れることが何らかの刺激になれば嬉しい」

約60年も続く取り組み、「ニッセイ名作シリーズ」を観て影響を受けた人もいるのでは……。
「親子2世代にわたってご覧いただいたり、観劇をきっかけに舞台の世界を目指し、実際にプロの俳優になった……というエピソードは、私たちもときどき耳にしています。調査をしているわけではないので、いつ誰が……とはっきりは言えないのですが。舞台芸術に触れる機会を提供するのが私たちのミッションですから、そうした話を聞くとやはり励みになりますね。劇団四季の方からも、『名作シリーズの舞台は絶対に踏まないと』という声を聞いたことがあります。演じる側としても、やりがいをもって挑んでくださっているようです」(大澤さん)

☑今後のスケジュール

音楽劇『精霊の守り人』に続いて、2024年からは小学生を対象とした無料招待公演として、絵本作家・ヒグチユウコさんの絵本を原作とした『せかいいちのねこ』、今年の6・7月に上演した劇団四季制作のミュージカル『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』は、引き続き2024年以降も上演が予定されています。
「上橋菜穂子さんの人気ファンタジー小説『精霊の守り人』を初めて舞台化した音楽劇『精霊の守り人』は人気の作品です。精霊の卵を宿した幼い皇子と用心棒・バルサの冒険を描いたもの。生演奏の音楽と歌、アクションシーンをふんだんに盛り込んだ、スペクタクルあふれる音楽劇になっていて、既に観劇された方からも高い評価をいただいています。子どもや若い世代にとっては、諦めずに立ち向かう心の大切さといったメッセージも感じ取っていただけるのではないでしょうか。これからも、みんなで議論を重ねて細かい部分をブラッシュアップしつつ、よりよい作品をみなさまへお届けしていきたいですね」(大澤さん)

【音楽劇「精霊の守り人」】
[学校・学年単位の招待公演]
2023年 9月  6日(水) 柏崎市文化会館アルフォーレ(新潟県)
2023年 9月 13日(水)~15日(金) 札幌文化芸術劇場hitaru(北海道)
2023年 9月 20日(水)~21日(木) NHK大阪ホール(大阪府) 
2023年 9月 28日(木) 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本県)

[一般公演]
2023年9月9日(土)千葉県東総文化会館 大ホール(千葉県)
10月1日(日)シンフォニア岩国 コンサートホール(山口県)

【舞台版「せかいいちのねこ」】
[学校・学年単位の招待公演]
2024年 2月  9日(金) 太田市民会館(群馬県)
2024年2月 15日(木) 愛媛県民文化会館(愛媛県)
2024年2月 19日(月) 北九州ソレイユホール(福岡県)

※招待公演については2023年度分の募集は終了。一般公演についてもチケットが販売終了となっている公演もあります。
詳細はホームページ等でご確認ください。


撮影/松橋晶子 取材・文/工藤花衣

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