里親と息子の4年半にタイムリミットが訪れる…2つの家族が選んだ未来は? 映画『1640日の家族』【伊藤さとりのシネマでぷる肌!!】
執筆者:伊藤さとり
映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。毎週水曜日更新なので、水曜日や週末の予定に加えてみてください!
親は子を思い、子は自分だけの愛が欲しい……
実話をもとにした里親と里子の物語
カウンセリングを学んでいた頃、様々な理由で親と暮らせない子ども達がいるアメリカの養護施設に見学へ行ったことがあるんです。会って間もない子ども達に両手とも手を繋がられてね、その先生が言っていたのは「自分だけの愛情が欲しいのよ」だったっけ。そんなことを思い出しながら涙腺崩壊となった映画『1640日の家族』は、フランス人監督ファビアン・ゴルジュアールの実体験を映画化したものでした。
物語は、生後18ヶ月の赤ちゃんを里子として受け入れた家族が主人公。アンナとドリスは実の子ども達と同じ愛情をシモンに注いで4年半の月日が流れたある日、実の父親からシモンを育てたいと連絡を受けます。フランスは日本と違い里親制度が柔軟で、児童社会援助局により、シモンは平日は里親の家で過ごし、週末は実父と過ごすことに。けれど、そう簡単にシモンの親への愛情は移行できるはずもなく、アンナだって人の子だなんて割り切れない。運命の歯車は愛情が深いほど狂っていくのです。
愛情って素晴らしいことなんじゃないの?しかもシモンは2つの家族に愛されているんだからそれで良いじゃないか!と部外者的には思ってしまう。だけど実父の立場になってみると我が子に自分よりも信頼している大人が居るとなると複雑。
そしてふと気づいたのです。アンナもドリスも子どもをよく抱きしめる。確かに海外の映画は本当にスキンシップが多い。果たして日本はどうなのよ? そしてスキンシップが足りていない自分に反省する。愛情って「ぬくもり」なんだと。だからアメリカの養護施設で出会った子ども達の手のぬくもりを今も忘れない。あの子達が「自分だけの愛情」を掴んでいて欲しいと願うのです。(伊藤さとり)
【里親制度とは?】
さまざまな理由で家族と離れて暮らす子どもを家庭に迎え入れて養育する制度。里親と子どもに法的な親子関係はなく、実親が親権者である。本作でシモンが経験するように、週末は実の家族と一緒に過ごし、平日は里親の家庭で過ごすなど、柔軟な里親制度は日本でも注目を集めている。
『1640日の家族』
【あらすじ】アンナ(メラニー・ティエリー)と夫のドリス(リエ・サレム)が里子のシモン(ガブリエル・パヴィ)を受け入れて、4年半が経った。長男のアドリと次男のジュールは、18ヶ月でやってきたシモンと兄弟のように成長し、いつだって一緒に遊びまわっている。にぎやかで楽しい日々が続くと思っていた5人に、ある日、激震が走る。月に1度の面会交流を続けてきたシモンの実父エディ(フェリックス・モアティ)から、息子との暮らしを再開したいとの申し出があったのだ。突然訪れた“家族”でいられるタイムリミットに、彼らが選んだ未来とは……。
7月29日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国公開
2021年/フランス/102分 監督・脚本:ファビアン・ゴルジュアール
出演:メラニー・ティエリー、リエ・サレム、フェリックス・モティ、ガブリエル・パヴィほか
©︎ 2021 Deuxième Ligne Films - Petit Film All rights reserved.
この記事を書いた人
邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。
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