【医師に聞く、40歳以降の不調】「生理不順や疲れやすい」のは更年期だけじゃない。甲状腺の病気の可能性も
婦人科系の不調を解決! 今回は甲状腺の病気。更年期の症状と似ているので、気を付けたい。
☑疲れやすさ、いつも眠い、むくみは更年期だからとガマンすべき?
とある40代女性のお悩みを、金地病院の山田恵美子先生に聞いてみます。
「生理不順で疲れやすく、いつも眠いんです。物忘れもひどく、肌はバサバサ。 目のまわりがむくんで目が開きにくいことも。これは更年期の不調ということで、数年ガマンすればよくなりますか?」
☑更年期の症状と甲状腺の病気はそっくりなんです
おっしゃる症状はどれも更年期の症状として知られますが、甲状腺ホルモン異常の橋本病やバセドウ病の症状とも合致します。甲状 腺ホルモンの病気なら自然によくなることはありません。婦人科で女性ホルモンと甲状腺ホルモン、もしくは内科で甲状腺ホルモンの検査を受けてはいかがでしょうか。
血液検査で甲状腺ホルモンの数値がわかります。甲状腺はのど仏の下の気管の前にあるハート形の臓器で、微量のホルモンを分泌し全身の新陳代謝を活発にし、元気にする働きをしています。脳、心臓、消化器、骨、皮膚、毛髪などをはじめとする多くの器官に関わっているので、ホルモン量が多すぎたり少なすぎたりすると全身のあらゆる場所で不調が起きます。
☑甲状腺ホルモンの病気
甲状腺ホルモンが過剰になるとバセドウ病を代表とする甲状腺機 能亢進症に、不足すると橋本病を代表とする甲状腺機能低下症になります。甲状腺の病気は女性の比 率が高く、20~30代ではバセドウ 病が、30~40代では橋本病が多い傾向ですが、40代以降でもバセド ウ病になることもあります。患者さんが気づくきっかけは、首の腫れ、目のまわりのむくみ、ひざ下のむくみなど。健康診断で指摘された、婦人科や内科からの紹介、うつ病の治療を受けていた患者さんが紹介されてくることもあります。
【バセドウ病、橋本病に共通の症状 】疲れやすい、脱毛、生理不順 、体力低下、筋力低下、むくみなど
【バセドウ病の主な症状】※細胞活性が上昇
微熱、不眠、イライラ感、発汗、眼球突出、かゆみ、色素沈着、手指のふるえ、頻脈、体重減少 (一部増加) 他
【橋本病の主な症状】 ※細胞活性が低下
元気がなくなりぼーっとする、物を忘れやすい、眠い寒がり、汗が出ない、皮膚が乾燥する、声がしゃがれる、眼瞼のむくみ、体重増加、動作緩慢、便秘他
☑命の危険はなく、治療で元気を取り戻せる!
症状が多岐にわたるので医師でも気づきにくく、40~50代の女性では更年期と思いこんで見過ごしてしまう方も少なくありません。ですが、甲状腺の病気の概要を知っていればご自身で「おかしい」と気づくことができます。そして内科や婦人科で血液検査をすれば 甲状腺ホルモンの状態がわかります。問題があれば専門医が精密検査をして服薬治療へ。1日に1回薬を飲むだけで、たくさんの不快な症状が手のひらを返したようにきれいさっぱりなくなります。
橋本病では薬の量をコントロー ルしながら服用を続けるのが原則ですが、バセドウ病ではよくなれば服用を中止することもできます。また、女性ホルモンの治療なども並行して行えます。橋本病の場合は、ヨウ素を多く含む昆布が甲状腺機 能低下を助長するので毎食、昆布だしのお味噌汁を飲む、毎日大量の昆布を食べるのはよくありません。NGではありませんが、常識的な量を2週間に1回程度にするのが無難です。首が腫れていても軽い橋本病であれば症状はほぼ出ませんし、服薬の必要もありません。検診で「要再検査」となったら、怖がらずに専門医を受診してください。たくさんの不調を抱えて老け込 んでいらした患者さんが、数ヶ月で見違えるほど元気になって若返 る姿を数えきれないほど見てきました。この機会に甲状腺の病気を記憶にとどめていただきたいです。
【教えてくれたのは】
イラスト=MAIKO SEMBOKUYA 取材・文=黒川ともこ ※GLOW2021年10月号より