• Culture

GLOWの
記事をシェア

【舞台】稲垣吾郎の迷える40代男子が、美しく儚い。『多重露光』舞台挨拶&公開舞台稽古レポート

執筆者:GLOW編集部

稲垣吾郎さん出演の舞台『多重露光』は10月22日まで上演中! 10月6日に行われた、稲垣さん、真飛聖さん、相島一之さんの息の合った舞台挨拶、公開舞台稽古の様子をレポート! 舞台は、稲垣さん演じる山田純九郎を中心に、純九郎の家族、麗華の家族、純九郎の幼馴染など、登場人物のだいたいが自分らしく生きよう、自分らしさって何?と悩む姿が、生きるってこうだよねと思わされます。いそういそう、わかるわかると思ってしまう40代の姿を、稲垣さんがどこか儚く表現していて、胸に迫ります!

【チームワークのよさをうかがわせる舞台挨拶】

本作は演劇ユニットiaku主宰の横山拓也が書き下ろしたオリジナル作品で、劇団俳優座のみならず、ミュージカルやオペラまで幅広いジャンルで活躍中の眞鍋卓嗣が演出を手掛ける人間ドラマ。
稲垣さん演じる主人公、写真館の2代目店主・山田純九郎は、戦場カメラマンだった父(相島一之)に会ったことがなく、町の写真館の店主として人気のあった母(石橋けい)からは理不尽な期待を背負わされてきました。そんな純九郎が家族や愛を追い求める姿が描かれます。

開幕の前に稲垣さん、共演の真飛聖さん、相島一之さん、演出の眞鍋卓嗣さんが登壇した舞台挨拶と公開舞台稽古が実施されました。和気あいあいとしたやりとりで作品の魅力を語る舞台挨拶からどうぞ!

眞鍋さんとは皆さん初めてですが、と問われると、はい!(稲垣さん)、はいっ!(相島さん)、はいっ(真飛さん)と元気よく、演出はいかがでしたかという問いかけに、いかがでしたでしょうか(真飛さん)、いかがでしたでしょうか(稲垣さん)、いかがでしたでしょうか!(相島さん)と応え、すでにチームワークのよさが伺えます。

そして眞鍋さんについて稲垣さんは開口一番「とにかく優しいです」とコメント。「怒った顔を見たことがなくて穏やかな現場です。ワークショップというものを初めて経験したんです。ちょっと恥ずかしかったんですよね。お客さんもいないのに誰に向けてやったらいいのか(笑)。でも、パントマイムで大縄跳びをしたり、連想ゲームをしたり、経験がなかったんですが、とても楽しかったです」と振り返りました。

続けて、真飛さんは「眞鍋さんは私たちが演じたことに対して否定をせずに肯定をしてくださり、プラスアルファの提案をしてくださるので、自分の中に間違っていない道に行っているんだなと自信につながりました。気づいていなかった道しるべをくださるという感じなので、温かく受け止めてくださって、みんなを大きな船に乗せて揺らしてくださっているような感覚でした」と信頼を寄せていました。相島さんは「気がついたら、世界が立ち上がっているんですよね。これが“眞鍋マジック”だと思いました。いいですね、いいですねって言われているうちに世界観ができあがっていくんですよね。ちょっとびっくりしました」と眞鍋さんの演出を評しました。稲垣さんも「無理にパズルをはめる感じはなく、自然とそうなっている感じで心地良かったです」と絶賛しました。

 その言葉を受けて、眞鍋さんは「すごいやりやすかったです。いろいろ考えてくださって、人柄もみなさんよくて、チームワークもバッチリなんですよね。しっかり作品に向き合ってくださっている感じがして、創作現場としてとてもいいものでした」と答えました。

そして稲垣さんと眞鍋鍋さんが子供時代、同じ地域に住んでいた話で花が咲きます。板橋区高島平で、学年が一つ違いと同世代だそう。言っちゃっていいのという心配に、高島平団地はかなり大きいので大丈夫、と稲垣さん。

次に相島さんが首から下げていたカメラにまつわる思い出の話に。すると、プライベートでも大のカメラ好きだという稲垣さんが「LeicaのM3って言う、伝説の…」と熱いトークを開始。稲垣さんはM3の解説をし始め、「シャッターを切るでしょ、初期のころのものはダブルストロークで2回やらないと切れなかったんです。シングルストロークになったものと、シリアルナンバーから言って、1960年代のものかも」マニアらしい一面を披露。それを受けて相島さんが「古いカメラってどう使うんだろうねって話していたら、『これはこうやって…』と“稲垣吾郎カメラ講座“が始まるんです。これがまた面白いんですよ」と絶賛。今回のように、稽古場でも稲垣さんがカメラについて熱く語ることが多くあったようです。相島さんは舞台できちんとダブルストロークで撮っているそうで注目です。

舞台上には暗室のセットもあり、稲垣さんはその場所まで歩き、「あれが暗室なんですけど、これが引き伸ばし機で、紙があって焼き付けてプリントする。ここで現像するんです」とわかりやすい説明をしてくれました。「僕の家にも暗室があるんですよ。フィルムカメラが大好きで、自宅に暗室を作ってしまいまして、僕もいつもこうやって赤色灯に包まれながら写真現像を楽しんでいます」と嬉しそうに語ってくれました。

また、役名の話へ。稲垣さん演じる「純九郎」は、ズミクロンレンズを、真飛さんさん演じる「麗華」はライカをもじったもので「役名は、だじゃれなんです(笑)。今は携帯でも撮れますが、あえてフィルムカメラで撮って一枚の写真にするよさもあるので、この劇を見て写真やりたいな、フィルムで撮ることに興味を持ってもらえたら」と語る稲垣さん。

そして、最後に稲垣さんがメッセージを。
「この作品は、誰もが抱えている過去への思いにやさしく寄り添ってくれる物語です。観終わった後に家族の大切さ、何より自分を愛することの大切さを感じてもらえる作品になっていると思います。出演者全員、心を込めてお届けいたしますのでぜひ劇場でご覧になってください」

【公開舞台稽古】

舞台となるのは、とある街の写真館。親から引き継ぎ2代目店主となった山田純九郎(稲垣吾郎)がひとりで暮らしている。父(相島一之)は純九郎が生まれる前に戦場カメラマンとしてベトナムへ行ってしまい、一度も会ったことがない。初代店主の母(石橋けい)は15年前に病死した。母の代から取引のある中学校の教員(橋爪未萠里)や、同じくひとり暮らしの幼馴染(竹井亮介)が、純九郎を気にかけてしばしば訪ねてくる。

『多重露光』公開稽古の1シーンより。幼馴染、学生の撮影を頼まれている学校の教員は純九郎を気にかけている。

「生涯かけて撮りたいものを見つけなさい」「お父さんのような立派なカメラマンになりなさい」。
町の写真館の店主として人気のあった母から、理不尽な期待を背負わされた子供時代。純九郎は、母親から言われ続けた言いつけに縛りつけられている。自分が本当に撮りたい写真は一体何か? 果たしてそんなものはあるのか? 
鬱々とした日々を送る中、純九郎の目の前に子ども時代から縁のある“お嬢様”が現れる。

『多重露光』舞台の1シーンより。純九郎の家族。

毎年、愛に溢れた家族写真を撮りに写真館を訪れる裕福な同級生の一家があり、その憧れの一家の“お嬢様”であった麗華(真飛聖)が、離婚をして実家に戻り、写真館を訪ねてきたのだ。麗華とその息子・実(杉田雷麟・小澤竜心ダブルキャスト)の家族写真を撮る中、偶然撮れた“多重露光”の写真。それをきっかけに、物語は一気に動き出す。

『多重露光』舞台の1シーンより。麗華と実の写真を撮る。

『多重露光』舞台の1シーンより。実が撮ってみたい、と撮影したのは多重露光の写真だった。

麗華と実との交流を重ねる中、純九郎は、幼少期から強く求めた家族の愛情や幸せに手が届きそうな感覚を味わう。そして、自らが過去に犯した、ある「罪」と向き合っていく。
多重露光の写真が撮れたことをきっかけに、純九郎を中心に、純九郎の父と母、麗華と息子、取引相手と隣人、それぞれの人物と重なり合っていく。そして、多重露光のように浮かび上がってくる純九郎という人物像は、人間の複雑さを感じさせ、彼が子どもの頃から抱える苦悩、葛藤する姿に胸が締めつけられる。

『多重露光』舞台の1シーンより

幼馴染や中学校教員との遠慮のない軽妙なやりとりで笑いを誘う場面もあれば、苦しみ抜いた純九郎が写真を燃やす切実な場面も描写。
幼馴染や取引先の中学校教員が頻繁に訪れ、何かと気にかけてくれるが、純九郎の欠落した愛情が埋まることはない。両親の威光や理不尽な期待、そして、隠し持ち続けた家族写真…。純九郎の抱えてきたものがすべて露呈したあと、物語は予想しなかった展開へ。
純九郎は、自分の撮りたいものが見つけられるのか。求め続けた愛を人生の中に収めることができるのだろうか。


舞台『多重露光』Information

【公演日程】2023 年10 月22 日(日)まで。10月16日は休演日
【会場】日本青年館ホール(東京都新宿区霞ヶ丘町4-1)
【入場料金】S席12500円/A 席7500円(税込・全席指定)
※未就学児童入場不可 ※営利目的の転売禁止
【一般発売日】9月2 日(土)10:00~(ぴあ、イープラス、ローソン、CHIZU TICKET)
【企画・製作】(株)モボ・モガ

撮影=梶田麻矢 取材・文=杉嶋未來 

この記事を書いた人

「45才、輝きはいつだって自分の内側にある」をテーマに、40代のヒントになる情報をお届けします! 雑誌は毎月28日発売!

記事一覧へ戻る

GLOWの記事をシェア!