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【おすすめ映画】命を懸けた北朝鮮からの脱出を捉えたドキュメンタリー『ビヨンド・ユートピア 脱北』 1/12公開 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

しかも脱北するのは簡単ではなく、多くのブローカーの手助けにより成り立つのだけれど、隣接する韓国へすぐ渡れることはなく、様々な国を経て、悪徳ブローカーに騙されないよう注意を払い、密告者に見つからないよう身を潜め、ジャングルの中を彷徨い、大きな川を息を潜めて渡るんです。見つかれば強制送還され、死にも繋がる虐待などを受けるそう。

この撮影に成功したのは、韓国の監督ではなく、マドレーヌ・ギャヴィン監督率いるアメリカ人クルーと手助けした人々の力によるもの。しかもコンゴで性暴力を受けた女性たちを保護する為に設立された団体「シティ・オブ・ジョイ」の活動をカメラで捉えたNetflixドキュメンタリー『シティ・オブ・ジョイ〜世界を変える真実の声〜』の監督です。彼女たちが脱北中の家族と会い、脱北の様子をカメラで撮っているんですが、途中、インタビューでカメラを向けられた祖母と娘とのやりとりは、洗脳の恐ろしさと最高指導者・金正恩を讃えなければ罰せられる恐怖政治の一端を垣間見る瞬間でした。もちろん言葉(インタビュー映像)だけではなく、脱北中の苦労もリアルに見られてしまう貴重な映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』。ひとつの国の恐怖ではなく、この国が世界に圧力をかける意味や、暴走したら何が起こるかに気づくこと、それだけではなく難民や移民に対して私たちが簡単に否定してはいけないことを痛感する、今、観るべきドキュメンタリーです。
——伊藤さとり

☑1月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
『ビヨンド・ユートピア 脱北』

【あらすじ】韓国で脱北者を支援するキム・ソンウン牧師の携帯電話には、日々何件もの連絡が入る。これまでに1000人以上の脱北者を手助けしてきた彼が直面する緊急のミッションは、北朝鮮から中国へ渡り、山間部で路頭に迷うロ一家の脱北だ。幼い子ども2人と80代の老婆を含めた5人もの人たちを一度に脱北させることはとてつもない危険と困難を伴う。キム牧師の指揮の下、各地に身を潜める50人ものブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す決死の脱出作戦が行われる――。

 2023/アメリカ/115分
監督:マドレーヌ・ギャヴィン『シティ・オブ・ジョイ~世界を変える真実の声~』 
製作:ジャナ・エデルバウム『大いなる遺産』、レイチェル・コーエン『ダンシング・ハバナ』、スー・ミ・テリー(元CIA

配給:トランスフォーマー
Ⓒ TGW7N, LLC 2023 All Rights Reserved

映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』公式サイト

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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