兄妹が“見てはならない”雲に包まれた謎の飛行物体に立ち向かうサスペンス・スリラー 映画『NOPE/ノープ』【伊藤さとりのシネマでぷる肌】
執筆者:伊藤さとり
映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。毎週水曜日更新なので、水曜日や週末の予定に加えてみてください!
空に現れた巨大な物体、
巻き起こす最悪の奇跡とは?
“あり得ない”出来事が突然、目の前で起こったらどうします?
そりゃもう逃げますよ、全速力で。と思っていても足がすくんで動けないのが現実だったり……。アカデミー賞4部門ノミネート『ゲット・アウト』(2017年)のジョーダン・ピール監督がまたやってくれました!
見えないものへの恐怖心を煽るサウンド、広大な牧場の上空を不穏なものに見せる撮影を手掛けたのは、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』(2017年)でアカデミー賞撮影賞にノミネートされたホイテ・ヴァン・ホイテマです。
落下物で命を落とした父親の死をきっかけに「あり得ない」体験をする兄妹と、街の人々の物語は、様々な映画からインスパイアされたカットやビジュアルばかり。例えばドラマ『ウォーキング・デッド』(2010年〜2016年)のグレンを演じたスティーヴン・ユァン演じる元人気子役の遊園地オーナーの事務所に飾られている自分出演映画ポスターから、このモデルってもしかして『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)『グーニーズ』(1985年)に出ていたキー・ホイ・クァン?!と勝手に想像してしまう楽しみどころもあってツボ! しかも『モンキー・シャイン』(1988年)を彷彿させる展開では直接的に殺戮シーンを描かないのもセンスがあるし、『オズの魔法使い』(1954年)がまさかの恐怖に変わるなんていう発想もどうかしているし(笑)。
さらにアニメ映画『AKIRA』(1988年)の金田バイクの名シーンまでさり気なく導入してたり、あの形状、あの登場の仕方は、間違いなく世界にも熱狂的なファンを持つ日本のアニメから…といったジョーダン・ピールがジャパニメーション好きだ!ってことまで証明しております。げんにインタビューでも答えていたのだからなんとも嬉しいサプライズ。まさに大音量の映画館で驚きの発見を得ながら“ぶる肌”効果を手に出来ちゃう一石二鳥の映画ですよ!
『NOPE/ノープ』
【あらすじ】
ロサンゼルス郊外のヘイウッド家の牧場。そこでは映画やテレビの撮影に使われる馬の調教が行われている。空からの落下物により牧場主の父親が亡くなっており、現在はOJが継いでいる。
ある夜、ゴーストと名付けられた馬が牧場から脱走する事件が発生。追跡したOJは丘の向こうに奇妙な物体を目撃。時を同じくして、牧場は電気供給が不安定となっていた。一時的な停電の後、落ち着きを取り戻した牧場で、OJは妹のエメラルドに“最悪の奇跡って、想像がつくか?”と問いかける。飛行機の破片で父が死んだことが、今なお信じられないOJは、その悲劇の際に巨大で速い“何か”を見たことを打ち明ける。野心家のエメラルドは、飛行物体らしきその“何か”をカメラに収めて、バズり動画を発表することを思いつく……。
公開中
2022/アメリカ/131分
監督・脚本:ジョーダン・ピール 出演:OJ・ヘイウッド/ダニエル・カルーヤ エメラルド・ヘイウッド/キキ・パーマー エンジェル・トーレス/ブランドン・ペレア アントレス・ホルスト/マイケル・ウィンコット リッキー・“ジュープ”・パク/スティーヴン・ユァン オーティス・ヘイウッド・シニア/キース・デヴィッド
© 2022 UNIVERSAL STUDIOS.
この記事を書いた人
邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。
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