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【映画】年の差恋愛事件、当事者×演じる女優の物語『メイ・ディセンバー ゆれる真実』 7/12公開【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

オスカー女優ふたりの名演

人という生き物は、答えを求めたがり、誰かを悪者にしたがる性分なのかもしれません。例えばこの映画で言うならば、大人である既婚者の女性の方が悪者として見られやすく、13歳の世間知らずの少年を誘惑し、洗脳したのではと私たちも思ってしまいがちです。げんに劇中の若き夫は、寡黙で妻の言いなりの様にも見えるほど渾身的なので、その疑惑に拍車がかかります。
そんな彼が興味を持ち育てているのが地元では希少となっている蝶の卵。最初は籠の中で大事に育てられ、サナギから羽化して蝶となった際に外の世界へと手放すのですが、まるで彼の願望の様にも捉えられるエピソードです。その理由に幼くして父親になり、家庭の中で早くから責任を負う役割を担うことになったので、彼にとって家は虫籠なのかもしれません。

ナタリー・ポートマン 映画『メイ・ディセンバー ゆれる真実』

映画はあくまでもフィクションで、実際の事件をモチーフにしただけなのに、当時の事件と同じく、映画の夫婦のことが頭から離れない不思議な感覚に囚われます。それはきっと女優を演じたナタリ―・ポートマンや当事者の女性を演じたジュリアン・ムーアの何処か謎めいた表情に違和感が残る名演のお陰もあるでしょうが、妙に艶っぽさと生臭さを感じるトッド・ヘインズ監督の演出もあるからなのかもしれません。いや、何よりも“親子ほど歳の離れた関係”には“下心がつきものなんじゃないか”と思ってしまう自分たちの思考回路のせいではないでしょうか。
——伊藤さとり

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

SPECIALIST

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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