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【対談】池松壮亮と伊藤さとりが「映画」を熱く語る! 『ぼくのお日さま』9/13(金)公開!【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

伊藤 カンヌから見た日本、日本映画界はどうでしたか? 

池松 カンヌは日本以上に日本の新しい才能を求めていてくれたことを感じました。日本だけでなく、世界中の新たな才能を発掘しフォーカスしている年だったと思います。「ある視点部門」は、ここ数年コンペ漏れだと言われてきましたが、もともとはこれからの監督を発掘するものとして立てられた部門で。そこにもう一度立ち返り、今作が選ばれて。監督週間には山中遥子さんの作品(『ナミビアの砂漠』)が選ばれて、カンヌがこれからの時代に焦点を当て本格的に動いたことを感じましたし、そこに日本映画が2作入っていることは素晴らしいことだと思います。

伊藤 私も奥山監督、山中監督の今回の作品を観て衝撃を受けました。脚本上でものごとを説明しようとしてしまいがちだけど、そんなものはどうでもよくて、自分たちの内面を描きながらも、ちゃんとアートとして魅せていますよね。

池松 世界では、いまなお戦争が続いていて、映画よりも現実の方が苦しいものがありますよね。映画のリアリティが通用しなくなってきていることも感じています。そこで映画の流れも近年変化していることも感じます。『ジョーカー』や『バービー』、『パラサイト』など、いわゆる広い意味での娯楽映画に大きな意味が出てきていると思います。映画というものの価値や存在意義を、もう一度見直していくべき時だと思います。
奥山さんは今作で、社会を描かずして現実を描くことを自然とやってのけていて素晴らしいなと思います。また、今作は言葉にまつわる映画でもあって、3人はそれぞれ、言いたいこと、言ってしまったこと、言えなかったことを抱えています。今作の主題歌は『ぼくは言葉がうまく言えない』という歌詞ではじまり、主人公のタクヤは吃音症を持っています。いま世界はあまりに騒々しく、沈黙は、ないものとされがちです。でもその沈黙にはたくさんの言葉や思いがあると思います。彼らの、この世界の、沈黙に耳を傾けること、そんな映画を目指したいと思ってきましたし、そのことをカンヌが最初に観てくれてあの場所に呼んでくれたのではないかなと思っています。

映画『ぼくのお日さま』 荒川(池松壮亮さん)と恋人の五十嵐(若葉竜也さん)Ⓒ2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

SPECIALIST

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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