【綾瀬はるかインタビュー】約1年ぶりの映画『ルート29』「今までの経験を手放し、新しい自分に出会えた」
執筆者:GLOW編集部
すべてを一回手放して臨んだ役
——のり子というキャラクターは、演じてみていかがでしたか?
初日は、のり子が市川実日子さん演じる理映子と話すシーンでした。段取りが終わった後、監督が「伝えようとしないでくださ」っておっしゃって。会話って伝えようとするものなので、難しいな、と。監督は「存在してるだけでいい。演技がどうじゃなくて、そこにその人が存在してることが、映画になっていく」と。また、「綾瀬さんは十分変な人だと思ってるから、そのままでいいです」とも(笑)。でも、やっぱり喋っていると、どうしても伝えようとしちゃうんですよね。伝えないって、どういうことだろう、のり子はどういう感じで言ってるんだろうって、考えていくなか、だんだんわかっていきました。家に一人でいる感じなのかなって。誰かがいると、人は意識してしまうけど、それが全くない状態。監督がアドバイスしてくれたように、のり子は自分の中に大きな宇宙がある人だから、人がいるけど、いないような感覚の人なんだなってつかめてきました。最初は難しいと思いましたが、今まで培ってきたこと、全部の経験を、一回手放そうと思いながら、撮影に臨んでました。
——今までの経験を手放す作業を経て、綾瀬さんが得たものは何ですか?
これまでの経験を壊すことは大変でもあったけど、すごくやりがいもありました。作品を見終わった後、のり子を演じる自分が、10代の時の自分の感じに似ていました。経験を積むとテクニックや技術がついていきますが、今回は自分の中からわいてくるものを頼りに演じるしかできなかった頃を思い出して、初心に戻れた気がしました。こういう芝居って、なんだか懐かしいなあって。今のタイミングで、新しい自分、新しい表現に出会える役をやれて本当によかったです。
――綾瀬さんが思う『ルート29』の魅力は?
ハルをはじめ、出会う人々が不思議で魅力的な人ばかりで、生きているのか生きていないのかがわからない。映像のかわいらしさも相まって、観終わった後に「生きるっていいな」と勇気をもらえる映画だと思います。一方で、生と死の境目を曖昧にすることで「死ぬことを怖がることもない」という不思議な感覚になる瞬間がありました。みんなひとつに繋がっている感じもあって、温かい気持ちになれます。
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