TOMORROW X TOGETHERは箱推しで!
プレミアムショーケース@六本木ヒルズアリーナ レポ②【菊地陽子の40代からの推し活道】
執筆者:菊地陽子
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
TOMORROW X TOGETHER――箱推しのススメ
ひとつのグループを長く推したければ
メンバー全員がセンターを張れる“5人組”がベスト!
TOMORROW X TOGETHERを推しにすることで得られる心の効能は、“青春”を取り戻すことができることだと、前回のコラムでは書いた。まだ推しが決まらない人に、推し活の手ほどきをする意味で、推し活用語なども解説していきたいと考えていたところ、TTOMORROW X TOGETHERが近年稀に見る“箱推し”(※特定のメンバーではなくグループ全体を推すこと)がしやすいグループであることに気づいたので、今回は、“箱推し”の楽しさと難しさの両方について述べていきたい。
さて、あなたが“推し活”未経験者なら、疑問に思ったことはないだろうか。「なぜ、推しは一人じゃないとダメなのか。グループ全体を応援すればそのほうが平和じゃないか」と。その考えは至極もっともだ。とくに、デビューしてまだ日の浅いグループにとっては、自分自身のファンを増やすことよりも、「僕たちの楽曲とパフォーマンスを好きになってもらって、グループとして成長したい」と思うほうが健全だし、実際それが普通だからだ。しかも、今この時代に、“推し活”市場が拡大していった理由のひとつには、コロナ禍でお籠り需要が増える中、茶の間(というか自宅)での推し活対象探しが活性化した背景がある。「この動画、観てみて!」などと友人に勧められ、いろんな動画を掘っていくうちに、自分の好みのアイドルやグループを見つけられて、映像作品や雑誌などにお金を払うようになったら、それはもう立派な推し活だ。もちろん、映像作品を人から借りるなどして、自分の懐は傷めず、タダで手に入る情報の範囲内で応援していても、それも推し活であることには違いない。原資がなくてもできるのが、“令和の推し活”のスバラシイ点だ。
とはいえ、最近はコロナ禍でのコンサート規制も緩和され、ライブ市場も徐々に活性化してきた。推し活ワールドに一歩足を踏み入れてしまったら、次に「本物が見たい!」と思うのはファンの性(さが)。友人と協力し合って、ライブのチケットを当て、当日のための準備に取り掛かるとする。ペンライトなどのグッズをあらかじめ購入し、当日の服装を決めて、あわよくばファンサービスがもらえるかもしれないからと、メッセージパネルやメッセージ入りのウチワを用意したりするとしよう。そのときあなたは気づくのだ。グループの箱推しでは、伝えるべきメッセージが届きにくいことに。また、メンバーカラーが決まっているようなグループの場合、箱推しのままでは、誰か特定のメンバーの色の入った服を着ることまで躊躇われてしまう。
そんなとき、男のファンならこう言うだろう。「ファンサをもらおうなんて下心は捨てて、音楽に没入すればいいじゃないか」。それもまた正論ではあるのだが、実際に会場に足を運んだら、“音楽に没入する”なんて悠長なことは言ってられなくなるのが、ボーイズグループの恐ろしさだ。何と言っても相手は人を瞬時に魅了するプロ。ライブ会場では、アゲアゲな気分にさせる曲や、フワフワの夢を見させてくれる曲、トロトロの感情にさせる曲が、これでもかという派手さで迫ってくる。その辺の音楽好きが吐く正論など、ちゃんちゃらおかしく感じられるほど、非日常のめくるめく異空間が目の前に広がるのだ。そして、その場で目があった(ような気がした)誰かとか、たまたまファンサしてもらえたとか、はたまた生の歌声が刺さったとか、ふと見せる笑顔にやられたなどのさまざまな理由によって、いつしか特定のメンバーを目で追ってしまっている自分に気づく。そこで初めて、“推し活”道におけるいわゆる“沼落ち”が完了したことになる。つまり、“茶の間”とか“ライト層”に分類されるライブに行かずにファンをやっている人なら“箱推し”のスタンスを貫くことはできるけれど、いざライブに行くとなると、ボーイズグループの場合は誰か一人を目で追うだけで精一杯で、平等にメンバーを愛でるなんてことは不可能なのだ。
TAEHYUN(テヒョン)
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
SOOBIN(スビン)
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
BEOMGYU(ボムギュ)
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
YEONJUN(ヨンジュン)
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
HUENINKAI(ヒュニンカイ)
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
ところが、先日TOMORROW X TOGETHERのショーケースを見て、「ライブ至上主義者に箱推しは無理」という考えを、少し改めることにした。披露した曲は2曲と少なく、日本語でのトークも含め30分強の短いイベントだったが、「この5人なら、箱推しが可能かもしれない」と思ったのだ。最近は、ボーイズグループといえば、7人から11人の間の人数であることが多いが、歴史をさかのぼると、トップを極めたボーイズグループは、5人組が多い。SMAPに嵐、K-POPなら2009年までの東方神起にBIGBANG……。私の印象では、5人までなら、ライブでソロ曲を披露しても(多少の好き嫌いはあっても)それが全体のアクセントになる。
才能と情熱に溢れたTOMORROW X TOGETHERは、まさに誰がセンターになってもおかしくないグループ。少年らしい青春のきらめきの中に、切なさや美しい翳りを感じさせるところは、まさにBTSの系譜だ。YEONJUN(ヨンジュン)の圧倒的スキルとセクシーな存在感、繊細さと包容力が絶妙に共存するSOOBIN(スビン)、明るさと創造性で周囲を照らすBEOMGYU(ボムギュ)、コメント力とハイトーンボイスで心を鷲掴みにするTAEHYUN(テヒョン)、“楽しむ天才”にして可能性無限大なHUENINGKAI(ヒュニンカイ)。5人までなら、間違いなくキャラは被らない。メンバーそれぞれとも関係を築きやすく、「今回は〇〇がメインの曲」という意図も伝わりやすい。たとえ沼化はしても、その先でしっかり冷静と情熱のあいだを探ることのできる5人組なのだ。
この記事を書いた人