悪役「草彅剛」の熱気に圧倒される! 舞台『ヴェニスの商人』舞台稽古レポート
執筆者:GLOW編集部
シャイロックの〝正義“をどう演じるのか
シェイクスピアの時代、高利貸しのユダヤ人は異端と呼ばれ、不当な扱いをされていた。そんな時代にあって、法廷でシャイロックは、情に厚いヴェニスの商人・アントーニオ(忍成)の肉1ポンドを担保として求めるとはなんて奴だ、やっぱり人でなしだと責められる。
法廷で周りから責め立てられる中、シャイロックに扮した草彅は、全身全霊の演技で自身の正義、正当性を熱弁する。彼のその主張は、現代を生きる私たちにとっては正論に聞こえる。シャイロックは金を貸す際利子をとっていたから人でなしとされたが、現代では当たり前のこと。金利で商売することも、法が定める範囲内であれば何も悪いことはしていないように感じる。むしろ、アントーニオの方が、シャイロックがユダヤ人の金貸しであることを理由に「唾を吐きかけ」「足蹴に」してきて、今ならば問題になるのでは?と考えさせられる。
シャイロックはアントーニオへの憎悪から、借金の担保としてアントーニオの肉1ポンドを要求する。草彅の演技の力もあって、行動は理解できないが、アントーニオを憎むシャイロックの気持ちはわかると感じる瞬間も多かった。特に一幕のラスト、娘のジェシカ(華)が、バサーニオらの友人の1人・ロレンゾー(小澤)と駆け落ちしたあとの場面では、草彅は、シャイロックの悲哀を切々とした語り口で語り、複雑な胸の内を繊細に表現し、“悪人”とは簡単に決めつけ難いキャラクターを浮かび上がらせた。
クライマックスは緊迫の法定シーンが続き、やがて大ドンデン返しが待っている。最後にシャイロックがどんな表情を見せるのか、じっくりと見て欲しい。そして、草彅に負けじと、ボルテージをあげていく忍成、野村、佐久間らの熱演も見応え大だ。草彅を中心としたキャストの熱演によって、古典シェイクスピアの魅力を改めて発見し、今の時代にこそ響くものを感じる作品だ。
取材・文=杉嶋未来
『ヴェニスの商人』舞台稽古
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