婦人科医に聞く「閉経後」のこと。更年期の後の老年期にむけて備えたい対策は?
執筆者:夏目 円
閉経後に用心したい疾患は?
夏目 閉経後は体力低下や健康面も心配です。また、性生活も気になります。
小宮先生 健康面でいちばん気になるのは、骨密度です。閉経によって、エストロゲンが急速に失われ、骨の新陳代謝が乱れるために骨密度が低下します。結果的に老年期の女性に骨粗しょう症が多いのはこのためです。なかなか自分の骨密度を測る機会が少ないので、閉経後に測定して、数値を把握することが大切です。体力も低下ことが多いので無理なく続けられる運動、ウォーキングや水泳などの有酸素運動、筋力アップをはじめましょう。性生活については、外陰部の乾燥によって性交痛を感じることもあります。パートナーに相談したり、潤滑ゼリーなどを用いてみるなどの対策がおすすめ。
夏目 更年期症状は程度の差があったり、症状がまったくでない人もいます。症状がなかった場合、とくに対策はしないでそのまま生活してもいいですか?
小宮先生 症状がなかったとしても、エストロゲンは低下していることは間違いありません。さきほどお話したように自分の骨密度を把握した上で対策を講じたり、生活習慣を見直してください。更年期は体重が増えやすく、血圧も高くなりやすいですから、食事、運動、そして睡眠をしっかりとって日々の生活を規則正しく行うことが大切です。エストロゲンが少ないと、コレステロール、脂質代謝、糖代謝の数値がずいぶん変わってきますから。
夏目 更年期は自分の体調を見直すきっかけとしてポジティブに捉え、生活習慣を改善するチャンスですね。1年後、3年後、5年後も楽しく生きていくためにも、更年期というライフステージを上手に乗り切ります。
【教えてくれたのは】
小宮ひろみ先生
国立成育医療研究センター 女性の健康総合センター センター長、女性総合診療センター センター長 1986年山形大学医学部卒業。同大産婦人科などで勤務した後、2004年より福島県立医科大学附属病院にて女性専門外来(2008年より性差医療センター)を率いる。同大医学部医療人育成・支援センター臨床医学教育研修部門副部門長、男女共同参画推進本部副本部長、男女共同参画支援室長、性差医療センター教授、ダイバーシティ推進本部副本部長、ダイバーシティ推進室長などを経て現職。専門は産婦人科、生殖内分泌、性差医療、漢方医療、女性医学。
この記事を書いた人
美容ライター。2023年4月よりメルボルンに移住、シティからトラムで20分、ビーチから徒歩10分という絶好のロケーションのアパートに娘と二人暮らし。50歳にして味わう初体験の数々に驚きと戸惑い、さらに興奮を隠せない日々が続くも、第二の人生をとことん楽しんでいる。母娘移住のきっかけ、日常のあれこれは毎週金曜日「note」にて更新中。