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推し活とは遠征である――地方での推し活はカスタマイズしてなんぼ
【菊地陽子の40代からの推し活道】

GLOW世代のライフスタイルに彩りをもたらす高貴な趣味”推し活”。自ら”オタク”を名乗り、旬な人々を取材しては魂の宿った言葉を紡いで世に送り出してきた鬼才のライター、菊地陽子氏による「推し活道」で、”推し活”の奥深さを知り、”推し”の尊さを知り、我が人生の歓びを知りませんか?


心の健康に欠かせない“推し活”の、“推しポイント”を教えます

「推し活とは、〇〇である」。さて、あなたはこの〇〇に、どんな言葉を入れますか?

今や、GLOW世代の心の健康に欠かせない“推し活”ですが、世の中に、“推し”とか“コンカツ”とか“終活”などといった言葉がまだ生まれる前(ちなみに“就活”はあった)、1990年代の半ばに、私の推し活は始まりました。当時は、堂々とオタクを名乗れるような時代でもなく、遠征先で会場までタクシーに乗れば、「お客さん、追っかけかい?」と言われるのが関の山。ボーイズグループにのめり込むことが、今ほど市民権を得ていない時代から、四半世紀以上にわたって推し活によって魂の自由(?)を獲得してきた私は(自分で言うのはなんですが)、“推し活コンシェルジュ”と名乗れなくもない知識と経験を蓄えています。そこで、このweb連載では、“推し活”の“推しポイント”について、あれこれ語っていきたいと思っています。

さて、記念すべき第一回めのテーマは、「推し活とは“遠征”である」です。“遠征”を辞書で引くと、“試合や研究、調査、探検のために遠くに行くこと”とありますが、好きなアイドルや俳優を追いかけて地方まで行く遠征は、まさに推し活の醍醐味の一つ。特別な理由でもなければ訪れない地方に、遠征と称して足を踏み入れることは、ライブにグルメや旅をオプションにつけて、推し活をカスタマイズするようなもの。00年代に「冬ソナ」で一気に広がった韓流ブームも、その頃時間やお金に余裕のあったオトナ女子が、気軽にグルメやエステや買い物目的でお隣の国に渡るようになったことで、その情熱を加速させたことは間違いありません。そして、地方ごとに特色のあるグルメや観光スポットのある日本では、国内遠征カスタマイズは、十分すぎるほどに楽しいのです。ライブを軸にした1泊2日、または2泊3日のスケジュールの中で、グルメはもちろん、ホテルライフ、観光や温泉といった女子の大好物をあれこれ詰め込むことができるのですから。

地方遠征なら神席ゲットの確率が大幅アップ!

推し活で遠征をオススメする理由としては、ほかに、チケットの取りやすさもあります。たとえば、全国アリーナツアーを敢行するボーイズグループの場合、横浜アリーナや代々木国立競技場のチケットの倍率が高くなるのは当然。東京や横浜近郊に住む人たちの人数が多いというだけでなく、地方に住んでいる人にとって、東京や横浜が、十分に遠征に値する土地であることも、倍率を上げてしまう理由の一つだからです。どうしても観たいライブの場合、地方を申し込んでおくと、あら不思議。それまでなかなか当たらなかったチケットが、いとも簡単に当たってしまう、なんてことが往々にしてあり得ます。しかも、アリーナといっても、1万人以上のキャパのライブ会場は、地方ではあまり存在しないので、横アリや代々木ではまず遭遇できない「神席」に当たる確率も高くなります。

ただ、遠征の場合、ネックになるのが同行者です。往復のチケット代、宿泊代などが余計にかかってしまうし、せっかく地方に行ったからには、それなりに美味しいものも食べたい。……などと考えていると、ライブとはいえ、まぁまぁの出費になります。学生同士ならいざ知らず、一緒に推し活をする仲間と金銭感覚を合わせる必要にも駆られます。例えば、自分がせっかく地方に行ったなら、それなりのホテルに泊まりたいし、美味しいものも食べたいと思っていても、その上限が、同行者と同じとは限りません。ホテルの部屋も、「寝るときは別々がいい」と考える人もいるようです(コンシェルジュのオススメは、同じ部屋に宿泊し、ライブ後に、DVDやBlu-rayを見て盛り上がるのが最高のオプションですが)。そこは、“大人になってからの友人”ということで、食事、宿泊の予算はいくらぐらいが上限かを、事前に擦り合わせておくといいでしょう。

新たな友達ができるのも推し活の醍醐味。ですが、その擦り合わせが面倒な人は、おひとりさまでの遠征も気軽で、悪くないと思います。私は、おひとりさまもOKなので、一度、大阪で推しのライブがあったときに、オプションとして、リッツカールトンに泊まったことがあります。

京セラドームまで、タクシーで向かっていると、案の定、タクシーの運転手さんが気さくに話しかけてきました。

「お姉ちゃん、追っかけ?」

「違います。ごく一般的なファンです。えーと、追っかけというのは、迷惑行為をやる人のことで……」

「まぁまぁ、楽しそうでええやん。女の人はたくましいわぁ。男の追っかけは、タクシー乗らん、おしゃれもせん。うまいもん食わん、いいホテルにも泊まらん。自分の好きな相手のために、頑張って働いて経済回してくれるのは、女の追っかけやで」

 その話を聞いて、私は、「追っかけも悪くないな」と思ったのでした。

菊地陽子フリーライター

アイドルや俳優、アーティストを中心に、これまで述べ8000人以上の「旬な人物」に取材・インタビュー。誰よりもファンを理解し、寄り添う文章に涙する女子が後を絶たない。GLOWオンラインでは、“推し”をテーマに、「旬な人物」に対する思いから日々感じていることを赤裸々に紹介。

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