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【映画】少年犯罪の再審、壊れた遺族はどうなるのか……3/18公開『赦し』【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

伊藤さとり 映画コラム 赦し

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は3月18日公開の『赦し』。犯罪を犯した未成年と遺族の家族の物語。


赦しを得たい、赦していいのか……それぞれの葛藤が描かれる

相次ぐ少年犯罪。そのニュースは衝撃的なものであり、「何故、その若さで人を殺めたの?」と疑問ばかりが残ります。それでも消えることのない少年犯罪に対して「その裏側」を覗くような映画が『赦し』というタイトルで公開されます。

7年前、高校生だった娘を同級生に殺されて以来、夫婦関係は破錠し離婚。今や酒に溺れる日々を過ごしていた克(尚玄)の元に裁判所から加害者・夏奈(松浦りょう)の再審に関する通知が届きます。大事な娘を殺した犯人に再生の機会を与えたくないと考える克は、再婚をしている元妻・澄子(MEGUMI)の元へと行き、共に法廷で闘おうと声をかけるのです。

 

映画 赦し 伊藤さとり

監督は前作『コントラ』は様々な映画祭で賞賛され、北米最大の日本映画祭ジャパン・カッツで第1回大林賞を受賞した日本在中のインド人アンシュル・チョウハンさん。確かに我が子を殺した犯罪者を許せないし、減刑なんて許さない、と思うのが親。けれど「何故、殺害したのか? 動機はなんなのか?」をもう一度審議することになった時、我が子の別の顔を知ってしまったら?

具体的な殺害シーンは入れず、回想シーンでも極力、精神的苦痛をダイレクトに与えない撮り方に特化したことで、加害者となった夏奈のその時の表情と、現在の声からその苦しみを観客に届けるという高度な演技力が求められる結果に。けれど演じた松浦りょうさんの全身から醸し出される夏奈の半生は壮絶であったことを窺わせるほどの見事な演技力でした。

もし加害者の生育環境や学校内での出来事を知ったら、それでも「憎悪」だけを向けられることが出来るのか? この映画を観ると固定観念を覆されるかもしれず、更にはその変化を持つことに恐れを感じるかもしれません。だからこそ観る意味がある映画なんだと私は思っています。


3/18(土)公開『赦し』

伊藤さとり 映画コラム  3/18公開 赦し 

3月18日(土)よりユーロスペース、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

2022年/日本/98分/
監督・編集:アンシュル・チョウハン 
プロデューサー:山下貴裕、茂木美那、アンシュル・チョウハン エグゼクティブ・プロデューサー:サイモン・クロウ ランカスター文江 アソシエイト・プロデューサー:前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘
脚本:ランド・コルター 撮影:ピーター・モエン・ジェンセン 音楽:香田悠真
出演:尚玄、MEGUMI、松浦りょう、生津徹、成海花音、藤森慎吾、真矢ミキ 
助成:文化庁 製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS 
配給:彩プロ  

©2022 December Production Committee. All rights reserved

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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