[テーブルマナー]ちゃんと知ってる? 食のスペシャリスト小倉朋子さんに聞く、周囲への配慮を意識した食の席のお作法7選
執筆者:GLOW編集部
「食と心」を柱に、食文化、伝統食、テーブルマナー、箸文化、トレンド分析、マーケティング戦略、食育、B級グルメ、ダイエットなどの専門家として活動をしている小倉朋子さん。世界各国のテーブルマナーから生き方の姿勢までを教える「食輝塾」主宰。最新書籍『教養としてのテーブルマナー』(SBクリエイティブ刊)から、食の席だけではなく毎日の振る舞いにも活かせる小倉流7つの法則を教えてもらいました。
小倉さんはテーブルマナーは周囲への配慮が必要と言います。
「私の考える『まわりへの配慮』とは、いかに『自分以外の万物に対して、自分勝手で礼を失する振る舞いをしないよう、配慮できるか』ということ。つまり心を配るべきは『人』だけではないのです。同席者やお店の人たちはもちろん、料理、飲みもの、さらには食器、ナプキン、テーブルなどの道具類・調度品に至るまで、『縁あって一堂に会している万物』に対して細やかに気を配る、ということ。それだけではなく、食材を作ってくれた農家の人、水や土など自然、先祖、経済、鉱物……、目の前にある食事に至るすべてに感謝することです。(中略)本当の意味での『美しい食べ方』につながる『まわりへの配慮』として、常に根底に流れているべき意識は、文化的背景の違いによらず共通しているものです。それを具体的に7つの法則にまとめたものが、次に紹介する『小倉式・食事七則』です」(『教養としてのテーブルマナー』より)
その1.フェイストゥフェイス
食事の席では周囲に配慮し、同席者と楽しくコミュニケーションを取るためにも顔を上げて、という小倉さん。「下を向いた状態で、相手の顔を見ながら会話をすることはできませんから、『顔を上げる』というのは、食事の席で、最低限、心がけたいことの1つなのです。(中略)顔を上げることで、自然と視線が上がり、視野も広くなります。すると周囲の状況を把握しやすくなって、お店の人に声をかけるタイミングの見極めや、『混んできたから、あまり長居せず早めに出よう』、会食の場なら『寂しそうな人に話しかけよう』といった気配りの判断がつきやすくなります。お店の人たちが、いかに細やかなサービスをしてくれているかなど、今までは目に留まらなかったところに気づくことも多くなるでしょう。」(『教養としてのテーブルマナー』より)
その2.指先にフォーカスする
小倉さんは「指先には、自分の心の表情が見える」と、自身のマナー教室でも指先の動きをミリ単位で指導しているそう。
「食事をするとき、相手は自分自身の指先、こちらの顔、そうでなければ、こちらの指先を見ているものです。『動くものに目が行く』というのは動物の本能であり、食事中にもっとも動いているのは指先だからです。つまり、こちらの指先は、相手の目に入りやすい箇所のトップ3に入るということ。緊張して指先がこわばっていると、それを目にした相手にも緊張が伝わり、居心地悪くさせてしまう恐れがあるのです。」(『教養としてのテーブルマナー』より)
その3.自分の「一口」サイズを知る
「『一口サイズ』にして食べるというのはよくマナー本に書かれていること。でも優先したいのは、会話に参加しやすい一口サイズ。『食べる』のも『話す』のも、1つしかない口の役割ですから、食べものをほおばった状態では、会話が途切れてしまうでしょう。それに、ほっぺたをパンパンにして、いつまでもモグモグと口を動かしている姿は、あまり美しいものでもありません。
こうした配慮に欠ける振る舞いを避けるために、まず『自分の一口サイズ』を知ること。これに加えて、『だいたいの咀嚼回数』も把握していると、なおよしです。すると、『食べものを口に運ぶ→咀嚼して飲み込む→言葉を発する』という循環のテンポがよくなります。『モグモグしながら話す』という見苦しさを避けつつ、上手に『食事をしながら会話を楽しむ』ことができるようになるのです。」(『教養としてのテーブルマナー』より)
その4.自分ベクトル
小倉さんが両親から厳しく教えられたことが「ナイフやフォーク、お箸の先端を相手に向けない」こと。テこれはーブルマナーの規則ではなく、海外のセレブリティも守れていないこともあるという。周囲に配慮するには、心のベクトルは外向き、お箸やカトラリーは内向きであるべきと言います。
「洋食の場合は、『刃先を相手に向けないこと』さえ完璧にできれば、ほかのことは強いて覚えなくても、自然に美しい食べ方ができるようになる。そういっても過言ではないくらい大切なことなのだと、つねづね教室でもお話ししているのです。」(『教養としてのテーブルマナー』より)
その5.ノイズキャンセル
咀嚼音、スープやパスタをすする音、乱暴にコップやワイングラスを置いた時の音、フォークやナイフの音など、耳触りな音を出さないというのは気を付けている人も多いのでは。その先の香りや見た目も気を付けて、と小倉さん。
「ジャラジャラした時計やアクセサリー、尖ったネイルなどは、見た目は美しくても、お店の食器やテーブルを傷つける恐れがあります。また、過度な香水は、食べものや飲みものの香りを邪魔します。特に懐石やお寿司など繊細な香りも含めて楽しむ和食をいただくときは、気をつけたほうがいいでしょう。長い髪の毛も、食事の場でなければチャームポイントかもしれませんが、食事中に体を傾けるたびに顔の横に流れてきて、しょっちゅう手でかき上げるのは、決して美しい振る舞いではありません。髪の長い人は、最初からまとめ髪にして行くか、食事が始まる前にサッと髪を結ぶなどの気遣いが必要です。」(『教養としてのテーブルマナー』)
その6.盛り付けの絶景をキープする
料理人の芸術的な作品に敬意を払い、その絶景を損なうことなく美しく食べたいもの。「そのために重要なのが、料理を出されたときに、『この料理は、どのように食べていったら絶景を保てるだろうか』と考えること。(中略)ポイントは、『盛り付けが、どこから始まり、どこで終わっているのか』を見極めることです。下から始まって上で終わっている場合は上から、奥から始まって手前で終わっている場合は手前から、という具合に、盛り付けの『終わり』を見極めれば、たいていは絶景を崩さずに食べ進めることができるでしょう。」(『教養としてのテーブルマナー』より)
その7.食べ終えて店を出るまで配慮を行き届かせて
小倉式食事7側の最後は食べ終わった時からお店を出る時までの配慮。「料理を食べ終えたら、お皿を見てみましょう。食べものを残さないというのはもちろんですが、魚の頭や骨などの残留物がお皿のあちこちに散らばっていたら、お皿の右奥にコンパクトにまとめます。(中略)そして最後、お店を出るとき。サッサと席を立って、お店の出口にまっしぐらというのはよくありません。おいしかった料理や行き届いたサービスに対して、最後に感謝を伝えたいという思いの込もった『ごちそうさまでした』『お世話になりました』のひと言だけでも、人の心に響きます。言葉の力はあなどれません。自分の発した言葉は周囲に響くと同時に、自分自身にこだまします。心の込もった言葉ひとつで、自分と同席者はいっそう満足感を抱き、お店には好印象を残しつつ、二度とないその時間を締めくくることができるのです。」(『教養としてのテーブルマナー』より)
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