【映画】『猫と、とうさん』7/28公開！ 猫との触れ合いが人や世界を変えるドキュメンタリー 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

ペットの動画をUPすると再生回数が伸びると言われるように全世界空前のペットブームならぬ動物ブーム。もはや自宅でペットを飼わずとも他者の動画で癒される時代へと突入し、犬、猫のみならず、様々な動物の日常の姿をSNSで見ることが出来ます。

本作『猫と、とうさん』は、そんな猫と暮らす男性に焦点を当てたドキュメンタリー。結果、ダラス国際映画祭やサンフランシスコ・インディーフェストで観客賞を受賞、他にもフローズンリバー・フィルム・フェスティバルで観客賞と審査員特別賞を受賞、ニューポート・ビーチ映画祭ドキュメンタリー部門功労賞を受賞するなど多くの人の心を掴んでいます。

今までも猫のドキュメンタリーは多く製作されています。日本では動物写真家・岩合光昭さんによる『岩合光昭の世界猫歩き』や、多摩川に捨てられる猫の救護活動をする写真家・小西修さんの姿を通した『たまねこ、たまびと』、他にもイスタンブールの猫と人との暮らしを捉えた『猫が教えてくれたこと』、韓国の団地取壊しによる猫の保護を試みる『猫たちのアパートメント』他、世界各国で猫ドキュメンタリーは作られていますが、男性と猫という着眼点は斬新。というのも監督のマイ・ホンが夫との暮らしの中で、猫との関わりが“有害な男らしさ”（トキシック・マスキュリニティ）を減少させることに繋がると気づいたことから、猫と暮らす様々な環境の男性たちにカメラを向けてみようと思いつき、映画は完成しました。

登場するのは全部で9組の猫と男性。奇しくも撮影は2020年のコロナによるパンデミックが始まる直前から。多頭飼いをする俳優兼インフルエンサーの男性が猫の動画でフォロワー数が増え、仕事を手にするエピソードや、前足を上げる仕草でSNSスターになった愛猫をキャラクター商品化した教師、猫とアメリカを横断するトラック運転手がUPする猫の写真がSNSで話題となっている様子など様々。興味深いのは、猫を愛する男性が野良猫たちの命を守る為に仲間たちを集め、避妊手術を施す活動をしている姿や、ホームレスの男性が路上暮らしの中で衰弱した猫と出会い助けたことから、人と出会い、その後、自身の癌治療と向き合うきっかけになっていくというものでした。

猫を愛することで人との交流が生まれ、自分と向き合うきっかけにも繋がっていく過程を、インタビューと共に彼らのその後の状況を追うことで私たちに変化を見せていくドキュメンタリー。確かに猫を愛でる男性たちは子供に話しかけるような表情を見せ、猫の世話も欠かさない。猫には犬同様にヒーリング効果があると言われているけれど、それって外見で人を判断せずに、自分に優しく接してくれる人を見極め、愛情を返す動物の本能によるもの。弱き者を助けるのが本来の人の姿である、と猫のお世話で気づかされるんでしょうね。実際、猫と暮らす筆者も猫の前では優しい人になれるんですが、ついうっかり人間関係では忘れがち。愛されたいなら愛せ、世話も怠らずに。私たちも学ぶべき交流関係そのものなのですよね。

【あらすじ】俳優として飛躍したいネイサン、ベイエリアでエンジニアとして働くジェフ、ニューヨークの路上で生活するデヴィッド、消防士のジョーダン……。様々な背景を持つ彼らの共通点は、家や職場で、ともに生活する猫たちをこの上なく愛していること。前例のない試練となった2020年を共に過ごした猫と彼らの絆を、爽やかかつタイムリーに描く。

 2022／アメリカ／89分
監督：マイ・ホン 　
出演：ネイサン･ケーン、ジェフ･ジャドキンス、デヴィッド･ジョバンニ
配給：ファインフィルムズ
© Gray Hat Productions LLC 2021.