【観るべき映画】『最悪な子どもたち』フランスの問題児たちのリアルな演技が見もの 12/9公開 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】
執筆者:伊藤さとり
驚いたのは、この子供達が児童養護施設や学校からのオーディションで選ばれた子達であり、撮影前にワークショップを行い、本番ではイヤホンを装着して撮影するシーンもあったそうです。それは監督の意図を伝えるために必要なアイテムだけで、あくまでも子供達の自然な感情重視。だから長回しのシーンも多い。けれどそれだけではリアリティある感情をまとめるのは難しい。そこを本作では、本物の俳優であり監督業も務めるヨハン・ヘルデンベルグや、本物の助監督が撮影スタッフ役として参加したり、主人公ライアンの姉役も本物の女優を起用することで、締まる画になっているのです。
何より、劇中リリが「将来女優になりたい」と言うシーンが、本作に出演した子供達の真実の言葉となって映画制作への興味や仕事のきっかけとなったのなら、本作を作った功績になると私は思っています。そんなことを書き連ねながら、しばらくは劇中の少年少女の魅力溢れる演技を忘れられない気がしているのでした。
——伊藤さとり
☑12月9日(土)シアター・イメージフォーラムほか公開『最悪な子どもたち』
【あらすじ】ある夏の日、フランス北部の荒れた地区を舞台にした映画が企画され、地元の少年少女を集めた公開オーディションが開かれる。選ばれたのは、異性との噂が絶えないリリ、怒りをコントロールできないライアン、心を閉ざしたマイリス、そして出所したばかりのジェシーの4人のティーンエイジャーたち。出来上がったシナリオは、彼ら自身をモデルにした物語だった。なぜ問題児ばかりが主役なのか? 監督の狙いとは? 住民たちが訝しむなか、波乱に満ちた撮影が始まり、予想外の展開が訪れるのだが……。
「映画の登場人物」を演じることで「自分自身」と向き合うことになったライアンたち。はじめての体験に格闘し、違う世界に飛びこむことで、彼らのなかの何かが少しずつ変わっていく。
2022/フランス/100分
監督:リーズ・アコカ、ロマーヌ・ゲレ
脚本:リーズ・アコカ、ロマーヌ・ゲレ、エレオノール・ギュレー
出演:マロリー・ワネック、ティメオ・マオー、ヨハン・ヘルデンベルグ、ロイック・ペッシュ、メリーナ・ファンデルプランケ、エステル・アルシャンボー、マティアス・ジャカン、アンジェリク・ジェルネ、ドミニク・フロ、レミ・カミュ
配給:マジックアワー
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この記事を書いた人
邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。
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