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【観るべき映画】カンヌ受賞! 料理が繋ぐ信頼と愛『ポトフ 美食家と料理人』12/15公開 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は、12月15日公開の『ポトフ 美食家と料理人』。トラン・アン・ユン監督は第76回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞しました。


愛する人やパートナーと観てほしい

今年のカンヌ国際映画祭の最優秀監督賞に輝いたトラン・アン・ユン監督。私にとっては『青いパパイヤの香り』(1993)、『ノルウェイの森』(2010)の監督であり、小津安二郎のカメラワークを敬愛し、ゆったりとした画の中で、日常の中で繰り広げられる人間同士の関係を描き出す名手です。そんなトラン・アン・ユンの最新作はカンヌでの評価の他にも来年開催となる第96回米アカデミー賞フランス代表に選ばれました。今作は監督のルーツとなるベトナムではなく、ベトナム戦争から逃れて家族と育った国、フランスの100年前が舞台です。

そもそも原作ものですが、トラン・アン・ユン監督がマルセル・ルーフによる原作を読み、この物語の夫婦の関係に共鳴して映画化を思いついたそう。確かに監督は愛妻家で自身の監督作には奥様である女優のトラン・ヌー・イェン・ケーが出演したり、作品によっては衣装や、セットデザインなどスタッフとして彼女は関わっています。今作では、アートディレクションと衣装を担当、準備に25日しかなかったものの当時の服装を再現することにこだわった衣装は、上質でセンスが光るものばかりです。

確かに劇中、ブノワ・マジメル演じる美食家ドダンは日夜、食のことばかりを考え、メニュー作りだけを生きがいにしている男。そんな彼と20年間パートナーのような立ち位置で、彼の想像を料理として完璧に再現してきたジュリエット・ビノシュ演じる料理人・ウージェニーの阿吽の呼吸は、トラン・アン・ユン夫婦にあったことがある身としては、映画を料理に変えて描いた彼らの夫婦関係のよう。二人がお互いを信頼し、尊重し、尊敬している様子が映画から香り立ってきて、ずっと見ていたい大人の恋愛関係なのも本作の魅力でした。

それにしても相変わらず、丁寧でこだわり抜いたカメラワークに定評があるトラン・アン・ユン監督。冒頭20分に渡る調理シーンはワンカットで撮られており、まさに匂いと味を感じる圧巻のシーンです。音楽を用いずに、食材を切る包丁の音や炒める音、肉が焼きあがる音など、自然の音を生かした映画は、余計な音のない世界で私達にその料理の味や香りを想像させ、大自然からそれらの食材が生まれていることまで想像が膨らむのです。これぞ、時間を忘れてその空間を味わう映画。是非とも愛する人と、もしくはマンネリ化したパートナーと見て欲しい作品です。
——伊藤さとり

 

Ⓒ2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA

☑12月15日(金)公開『ポトフ 美食家と料理人』

ⒸCarole-Bethuel Ⓒ2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA

19世紀末、フランス。森の中に佇む美しいシャトーに暮らす有名な美食家ドダンと天才料理人ウージェニーが、究極のメニューを次々と創り出す。ウージェニーを演じるのはオスカー女優のジュリエット・ビノシュ(『ショコラ』『真実』)、ドダンにはブノワ・マジメル(『ピアニスト』『愛する人に伝える言葉』)。深い絆と信頼で結ばれ互いをリスペクトしているが、プロとして自立しているウージェニーは、ドダンのプロポーズを断り続けてきた。そんな二人の料理への情熱と愛の行方が描かれる。
 監督は繊細な映像美で高く評価されるトラン・アン・ユン(『青いパパイヤの香り』『夏至』『ノルウェイの森』)。調理過程の撮影はワンカット、魚や肉を焼く音が音楽、ミシュラン三つ星シェフのピエール・ガニェールが完全監修。新たな文化が繁栄した時代“ベル・エポック”に、“美食”もまた芸術のひとつとして追求された。つまり、〈食〉とは一大エンターテインメントだということ。その深さと楽しさを存分に堪能させてくれる、〈新たなるグルメ映画の傑作〉が誕生した!

12 ⽉15 ⽇(⾦) Bunkamura ル・シネマ 渋⾕宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
 2023/フランス/136分
監督:トラン・アン・ユン
脚本・脚⾊:トラン・アン・ユン
出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル
料理監修:ピエール・ガニェール
配給:ギャガ
原題:La Passion de Dodin Bouffant
翻訳:古⽥由紀⼦

Ⓒ2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT – FRANCE 2 CINEMA

映画『ポトフ 美食家と料理人』公式サイト

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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