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羊から生まれた“何か”を育てる夫婦に幸せはあったのか 9/23公開映画『LAMB/ラム』【伊藤さとりのシネマでぷる肌】

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。毎週水曜日更新なので、水曜日や週末の予定に加えてみてください!


羊飼いの夫婦は羊から生まれた
あるものを育てる、
その正体は……

先日、ある動物園で群れから離れ、一頭だけで暮らしている3本足のマーコールを見かけました。張り紙に書かれているのは、病気で3本足になり、群れの抗争から逃げることもできず、仲間にも入れてもらえず、その子の安全の為に群れから離している、というものでした。それは人間と同じく動物の世界でもイジメはあり、自分たちと異なる姿の者を排除する象徴的な光景でした。だったら映画『LAMB/ラム』のアダちゃんも羊小屋で暮らしていたら、酷いイジメにあったのかもしれない。それでもお母さん羊は、アダちゃんを必死に守ろうとしたんじゃないかな。

このアダちゃんとは、羊から生まれた“何か”であり、映画では羊飼いの夫婦に我が子のように育てられます。まるで人間の赤ちゃんを育てるように。それに牧場は人里離れているから人目を気にすることも無く、ただ母羊のしつこさだけが癇に障るだけ。だけどこれを人間に置き換えたられっきとした人さらいなわけです。しかも映画の中には家畜である羊の他に、犬や猫というペットも出てきます。そう考えると人は何を基準に、地球上に生まれた同じ動物たちに格差を作るのでしょうか? 更にどうやってその群れを支配してるのでしょうか? でも映画の主人公である羊飼いの妻は穏やかで愛に溢れた人…。

見終わった瞬間、発想の転換だけで戦慄が走る『LAMB/ラム』。アカデミー賞アイスランド代表に選ばれただけある映像美と人間の心理をえぐる本作は、頬を引きつらせる効果ありの極上ミステリーでした。


『LAMB/ラム』

【あらすじ】山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。子供を亡くしていた二人は、”アダ”と名付けその存在を育てることにする。奇跡がもたらした”アダ”との家族生活は大きな幸せをもたらすのだが、やがて彼らを破滅へと導いていく—。

9月23日(金・祝)新宿ピカデリーほか全国公開
2021/アイスランド・スウェーデン・ポーランド/106分

監督:ヴァルディミール・ヨハンソン 脚本:ショーン、ヴァルディミール・ヨハンソン
出演:ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン

©︎2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

『LAMB/ラム』オフィシャルサイト

伊藤さとり映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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