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【映画】公開中『CLOSE/クロース』 仲良しな少年二人、その先に何かがあるのかなかったのか……【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:GLOW編集部

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は第75回カンヌ国際映画祭で、グランプリを受賞した『CLOSE/クロース』。気持ちを定義するのはまだ難しい少年たち、親密さは悲劇を生んで……。


最近勢いのある、子どもたちの映画

第76回カンヌ国際映画祭で坂元裕二さんが脚本賞を受賞し、是枝裕和監督がクィア・パルム賞(LGBTQやクィア=既存の性のカテゴリに当てはまらない人)を受賞した『怪物』(2023年)も子ども達が主役となる映画。そんなカンヌで前年度グランプリを受賞し、第95回アカデミー賞国際長編映画賞(ベルギー代表)にノミネートされるなど、各国の映画賞で47受賞104ノミネートを果たしモンスター級の賞賛を浴びた子ども達の物語が『CLOSE/クロース』です。

しかも主人公の男の子は、『怪物』の男の子達と年齢が近い13歳。彼には毎日ずっと一緒に過ごす大親友が居て、その子と同じ中学校に入学します。二人はあまりにも仲が良いことを同級生達から冷やかされ「ゲイなのか」と言われるようになります。次第にレオは周囲の目を意識し始め、レミと距離を置くようになっていくのですが、それが予想もしていなかった出来事へと向かっていくのです。

小学生ではまだはっきりとは分からない性自認。それが一学年上がっただけというまだ理解しきれない年頃に主人公を設定、本作では二人の少年の親密さを周囲の無自覚な色眼鏡によって、変化をもたらしてしまう残酷さが描かれています。小さい頃は親からのスキンシップで愛情を知り、友情も愛情のひとつだと理解し始めて成長する過程の中で、いつしか男女仲が良いだけで「恋愛」にカテゴライズしてしまう世の中。それが同性同士でもスキンシップが多ければ恋愛だと認識してしまう思考を、一体誰が植え付けたのか?そう考えると、間違いなく様々な方法で大人達が無意識に伝えてしまっているのです。

監督を務めるルーカス・ドンが10代の頃に経験したことをベースに描いた本作。長編初監督作品となる前作『Girl/ガール』(2018年)では、プロのバレリーナを目指すトランスジェンダーの女性を描き、第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品され、新人監督賞であるカメラ・ドールとクィア・パルム賞、ある視点部門俳優賞を手にしました。
確かに子ども達が主人公の映画というと代表作に『小さな恋のメロディ』(1971年)があります。それは11歳の男の子と女の子が親密になり、恋をして「結婚したい」と思う純粋な愛の物語でしたが、親密になるだけで「これは恋だ」と思ってしまうのはもしかしたら私たちの色眼鏡かもしれません。人によって恋愛感情を抱く歳も違うし、そもそも恋愛感情を抱かない人だっている。

そもそも「愛している」とかセリフにも出てこない本作を、LGBTQ映画、クィア映画と決めつけたがるのも私達の悪い癖なのかもしれない。ただし、彼らの存在を消してはいけないのも事実。ルーカス・ドン監督が探求する「人にラベルを貼ることで人は傷つく」というテーマは、私たち大人が今一度考えなければいけないことなんですよね。

☑公開中『CLOSE/クロース』

【あらすじ】花き農家の息子のレオと幼馴染のレミ。昼は花畑や田園を走り回り、夜は寄り添って寝そべる。24時間365日ともに時間を過ごしてきた2人は親友以上で兄弟のような関係だった。13歳になる2人は同じ中学校に入学する。入学初日、ぴったりとくっついて座る2人をみたクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかける。「親友だから当然だ」とむきになるレオ。その後もいじられるレオは、徐々にレミから距離を置くようになる。

ある朝、レミを避けるように一人で登校するレオ。毎日一緒に登下校をしていたにも関わらず、自分を置いて先に登校したことに傷つくレミ。二人はその場で大喧嘩に。その後、レミを気にかけるレオだったが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日、課外授業にレミの姿はなかった。心ここにあらずのレオは、授業の終わりに衝撃的な事実を告げられる。それは、レミとの突然の別れだった。移ろいゆく季節のなか、自責の念にかられるレオは、誰にも打ち明けられない想いを抱えていた…。

 2022/ベルギー・フランス・オランダ/104分
監督:ルーカス・ドン  脚本:ルーカス・ドン、アンジェロ・タイセンス 
出演:エデン・ダンブリン グスタフ・ドゥ・ワレル エミリー・ドゥケンヌ レア・ドリュッケール イゴール・ファン・デッセル ケヴィン・ヤンセンス
配給:クロックワークス、STAR CHANNEL MOVIES
提供:クロックワークス、東北新社

ⒸMenuet / Diaphana Films / Topkapi Films /Venus Production 2022

映画『CLOSE/クロース』オフィシャルサイト

この記事を書いた人

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