【更年期】高尾美穂×板谷由夏が女性のメンタルと体についてトーク! Part.1「産後と更年期、憂うつや情緒不安定は女性ホルモンのしわざ」
執筆者:GLOW編集部
宝島社の女性誌11誌、男性誌2誌の計13誌合同によるフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう! Hello Femtech」から、高尾美穂先生と板谷由夏さんのトークをお届け。まずは女性の体とホルモンの関係。
※Hello Femtechプロジェクトでは、女性の体に関する正しい知識を身につけ、年齢・性別問わず言葉にして話すことを大切に考え、企業向けセミナーや読者向けインスタトークライブを定期的に開催中。
女性ホルモンと生理の関係
板谷 私たち世代は、メンタルの状態がゆらぎがち。そもそも、その理由って?
高尾 卵巣から分泌されるホルモンは一般的に「女性ホルモン」と呼ばれていますが、その代表が「エストロゲン」と「プロゲステロン」。前者は抗うつ作用、後者は抗不安作用を持ち、メンタルの状態を維持する役割を果たしています。これらのホルモンが減ると、うつっぽくなったり不安になったりするわけです。生理周期を見ると、エストロゲンがたくさん分泌されたあとに排卵が起こり、その後、エストロゲンもプロゲステロンも両方が分泌されている時期が来て、それらが分泌されなくなると生理が来るという仕組み。つまりホルモンがある状態からない状態になる時期が「生理前」。抗うつも抗不安もどちらの役割も果たしてもらえないから、不安定になるんです。
板谷 私たちは、仕組み上、ホルモンに支配されているわけですね。
高尾 妊娠中から産後にかけての時期は、その影響が顕著。女性の人生における第一のメンタルクライシス期です。人生において、このふたつのホルモンが最も多く分泌されるのが妊娠中で、しかも、妊娠中に限っては、卵巣ではなく胎盤で作られるので、なんとおよそ200倍もの量が分泌され続ける。だからみんなハッピーなんです。ところが、出産直後に胎盤も体外に出てしまうとエストロゲンもプロゲステロンも作られなくなり、産後初めての生理が来るまでは抗うつ作用も抗不安作用もない状態が続く。マタニティブルーや産後うつには確かな理由があるんです。
板谷 思い当たります! 今振り返ると不思議なんだけど、情緒が不安定になってよく泣いていました。その時期、メンタルが保てないのは当然なんですね。
【産後に第一のメンタルクライシスが起こりがち】
高尾 さらに、赤ちゃんのサイクルに引っ張られて、睡眠時間も確保できないでしょう? それだけでも十分、うつの理由になる。まわりが気づいて、時どき誰かが代わりに面倒を見てくれたりしたら少しは状況が変わるのだけれど、自分から調子が悪いと言い出せなかったり、夫はよかれと思って「そっとしておこう」と思ったり。家庭という閉鎖空間の中で起こるから、ことが深刻になる。現代社会の大きな課題だと思っています。
板谷 産後は家から出ないし、コロナ禍を経てさらに孤立している感覚があるんじゃないか、と。そういう時は、多少お節介だと思われても、まわりがコミュニケーションを取るように働きかけることが大切なのかもしれないですね。
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更年期にホルモン値より周期をチェックしたほうがいいかも
高尾 第二のメンタルクライシス期が更年期。更年期は、女性ホルモンの分泌が急激に減少するといわれますが、厳密にいうとアップダウンを何度もくり返してジグザグ曲線を描きながら、平均が落ちていくんです。実はこの「ダウン」のタイミングが辛い。ホルモンがある状態からない状態になる生理前がくり返されるみたいなものだから。生理前はだいたいの周期がわかるし、産後も次の生理が来たら終わるけれど、更年期は、どのくらいのサイクルでやって来るのか、いつ終わりがやって来るのかよくわからない。メンタル的にはさらに大変なんです。
板谷 私たちはそんな大変な時期にいるんですね。ただ、仕組みや理由がわかると、不安が減ってきた気がします。
高尾 更年期は、閉経を挟んで10年と定義されています。そして、最後の生理が来てから12ヶ月間来なかった時に、最後の生理が来た年齢が閉経年齢となります。つまり、12ヶ月生理が来なかったことを確認しないと、閉経といえないんです。この10年を前5年、後5年に分けて考えると、どちらもアップダウンをくり返しているんだけど、大きな違いは前半5年には生理が来るということ。しかも、それまでの安定した生理ではなくて、いつ出血するかわからない、量もわからない、いつまで続くかわからない、加えて、ホットフラッシュや疲労感など、体の不調も同時に現れることでさらに追い打ちがかかって、メンタル的な不調も現れやすいんです。
板谷 意識の高い友人は、女性ホルモンの値を調べたりしているみたい。やっぱり調べておいた方がよいんですか?
高尾 本来、更年期の診断に、ホルモン値は必須ではないんです。アップダウンをくり返しているために、今日は高いかもしれないけれど、3日後は低いかもしれないといった具合に実体を摑みづらいから。生理周期をきちんと把握していれば、ある程度周期の変化をホルモン値の変化と置き換えることができるんです。
板谷 何日周期かがわかっていればいいということですか?
高尾 たとえば、それまで30日周期だったけれど、しだいに短くなって25日周期になってきた……、みたいなケース。その後もずっと周期が短くなり続けるのではなく、今度はしだいに間隔が延びていきます。このような周期の変化がまさに移行期のサイン。やがて、その間隔が60日を超えると、そこから約1〜2年で閉経を迎えるということがわかっています。
板谷 そうなんですね。ホルモン値を知ることが安心感につながるのであれば、知ることに意味はあると思うけれど、必須ではないんですね。勉強になります。
【板谷由夏さん】1975年、福岡県出身。俳優として活躍するかたわら、ファッションブランド「SINME」のディレクターの顔も持つ。主演映画『夜明けまでバス停で』では「2022年度全国映連賞」女優賞、「第32回日本映画批評家大賞」主演女優賞を受賞。出演作、Netflixシリーズ『離婚しようよ』が好評配信中。テレビ朝日系『シッコウ‼ ~犬と私と執行官~』(テレビ朝日系)にも出演中。
【高尾美穂先生】イーク表参道副院長、産婦人科専門医、スポーツドクター、ヨガ指導者。診療の傍ら、NHK『あさイチ』、stand.fm「高尾美穂からのリアルボイス」への出演をはじめ、メディアやSNSで情報を発信。近著『更年期に効く 美女ヂカラ』(リベラル社)など著書多数。
近日公開の更年期をラクにする、編に続きます!
撮影=HAL KUZUYA [板谷さん]スタイリング=青木千加子 ヘア=MATSU KAZ〈3rd〉 メイク=水野未和子〈3rd〉 [高尾先生]ヘア&メイク=レイナ 取材・文=松本千登世 ※雑誌GLOW2023年7月号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
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