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【映画】『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』実在した政治家シモーヌ・ヴェイユを描く 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は公開中の『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』。『エディット・ピアフ 愛の讃歌』『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』に続く、実在した世界を動かした女性を描く3部作のラストです。


女性や弱いものに寄り添い、今も尊敬を集めるシモーヌ・ヴェイユの生涯

「#MeToo」運動が日本では思いのほか広がっていない。今年6月に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ・レポート」男女平等度ランキングで日本は146カ国中125位。前年より9つもランクを落としています。世界では変化する為の活動が盛んで、映画を見ているだけでもそれは明らかです。中でも女性の人工中絶や若い妊娠が未来に弊害を及ぼすことを描いた作品が多数見られ、『17歳の瞳に映る世界』(2020)、『あのこと』(2021)、『サントメール ある被告』(2022)は近年、公開された作品です。

そして今、1974年のフランスで、中絶を禁止するカトリックや男性議員が大半の中、自身の名前から取ったヴェイユ法という人工妊娠中絶の合法化を勝ち取った有名な政治家の波乱に満ちた人生を描いた映画『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』が日本でも公開されています。
彼女は1979年には女性初の欧州議会議長に選出され「女性の権利委員会」を設置した女性政治家、シモーヌ・ヴェイユであり、フランスで絶大な人気を誇る歴史に名を残す人物。本国では2022年国内映画年間興行収入No.1の記録を残した本作は、常に女性や弱い立場に追いやられる人々に目を向けていた彼女が、過去にアウシュビッツ収容所に送られた壮絶な体験からの行動でもあったことを伝える記憶を辿る物語です。

映画では、感情が揺さぶられるエピソードや女性ならば特に胸に突き刺さるセリフが散りばめられています。特にシモーヌの名言の一つである「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには女性に聞けば十分です」は、1974年の国民議会の演説の際に発せられたシモーヌの思いです。これは宗教観によりレイプであろうと望まぬ妊娠であろうと中絶を禁止していた人々や、女性の未来に無関心な社会への痛烈な批判です。

そんな彼女は、結婚しても政治への関心があり、3人の子を持ち子育てをしながら司法試験に合格。その後、様々な不平等に目を向け自身の体験と共にホロコーストの記録を残そうと活動しながら、社会において人々が公平な扱いを受けられるよう奮闘していきます。

シモーヌは2017年6月30日に亡くなり、映画はその後に製作されましたが、主演のエルザ・ジルべルスタインは、生前から本人や親族、近親者から映画化の際はシモーヌ役をと、ラブコールを受けていたそうで、その演技は、本人と生前、交流があったことも大きく影響しているのではと伺える魂の叫びと言える説得力あるものです。

映画を見て感じたのは、社会を変えるのは、他人事だと思わずに、女性や社会的マイノリティと言われる弱い立場の人たちが声を上げることなのではと、ということ。シモーヌの力強く愛に満ちた生き様を見て私自身、背筋が伸びる思いでした。「女性も勉強して自立しなさい」と言うシモーヌの母の言葉は、日本の未来も変えていく当たり前だけれど、成長すると忘れがちな言葉なのです。——伊藤さとり

☑公開中『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』

【あらすじ】1974年パリ、カトリック人口が多数を占め更に男性議員ばかりのフランス国会で、シモーヌ・ヴェイユ(エルザ・ジルベルスタイン)はレイプによる悲劇や違法な中絶手術の危険性、若いシングルマザーの現状を提示して「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには、女性に聞けば十分です」と圧倒的反対意見をはねのけ、後に彼女の名前を冠してヴェイユ法と呼ばれる中絶法を勝ち取った。1979年には女性初の欧州議会議長に選出され、大半が男性である理事たちの猛反対の中で、「女性の権利委員会」の設置を実現。女性だけではなく、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など弱き者たちの人権のために闘い、フランス人に最も敬愛された女性政治家。その信念を貫く不屈の意志は、かつてアウシュビッツ収容所に送られ、“死の行進”、両親と兄の死を経て、それでも生き抜いた壮絶な体験に培われたものだった-ー。

 2021/フランス/140分
監督・脚本:オリヴィエ・ダアン  
出演:エルザ・ジルベルスタイン、レベッカ・マルデール、オリヴィエ・グルメ、エロディ・ブシェーズ
配給:アットエンタテインメント
© 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS – FRANCE 2 CINÉMA – FRANCE 3 CINÉMA

映画『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』オフィシャルサイト

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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