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【映画レビュー】怖いものが苦手な窪田正孝が、齊藤工監督だから出演を決めたホラーミステリー『スイート・マイホーム』9/1公開! 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は9月1日公開の『スイート・マイホーム』。選考委員の満場一致で小説現代新人賞を受賞した神津凛子さんの『スイート・マイホーム』。齊藤工監督が、原作の映像化するには衝撃的な描写を慎重に描いた作品です。


齊藤工監督の手腕が冴えわたる

「窪田正孝くんが主演でなければ成立できなかった」と言った俳優・斎藤工さん。今までも齊藤工名義で監督業をし、初の長編監督作品『blank13』(2018)は国内外の映画祭で8冠を受賞したほど。けれど今回は二つ返事で監督を引き受けた訳ではなく、色々と思うところがあったそう。その理由は第13回小説現代長編新人賞を受賞した神津凛子さんの原作が映像化するには難しいシーンが多く、撮り方についても慎重に考えなければと思ったからだそう。

だからか、普段から国内外の映画を沢山観ている映画通の監督らしく、センシティブとなるショッキングな場面の切り取り方にも工夫が施され、ダイレクトに視覚に影響を与えるショットが登場しない分、音やカメラワーク、役者の表情から恐怖を感じさせる映画に。それでもゾクゾクするこの面白さたるや、実にアッパレなのです。

映画はある仲の良い一家が新居を買ったことで体験する目には見えない恐怖体験を描いていきます。面白いのは、不安を感じる場所が幼い頃のトラウマを呼び起こすきっかけにもなり、自分が築き上げた家庭は自分の生育環境からの理想であり、それは兄弟の関係にまで影響を及ぼすという人間の内面を綴った作品であった点。だから怖がらせようとするホラー映画ではなく、人間の内面こそが恐ろしいというのが本作の特徴です。

なんと撮影中は、俳優が映画のイメージを掴みやすいようにシーンでかける予定の音楽を薄く流して撮影していたそう。これは役者でもある齊藤監督が毎回、行っている手法で、役者の演じやすい環境作りを第一に考えている証。そんな優しさもあり実は怖いものが苦手という窪田正孝さんは信頼している齊藤監督だから出演を決めたそう。けれど霊感がある本人は、ロケ先で霊現象に悩まされていたというのは驚き。
ちなみにキャスティングは齊藤監督の希望通りで、特に窪塚洋介さんは齊藤監督の熱いラブコールにより実現したとのこと。窪田正孝さんと窪塚洋介さんが兄弟なんだ、とスクリーンに並んでいる姿を見るとやたらと納得してしまう摩訶不思議さ。そしてスティーブン・キングが大好きだったという原作者の神津さんの世界観を映像で再現した齊藤監督の手腕に拍手せずにはいられない作品でした。
――伊藤さとり

☑9月1日(金)公開『スイート・マイホーム』

【あらすじ】極寒の地・長野県に住むスポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘たちのために念願の一軒家を購入する。“まほうの家”と謳われたその住宅の地下には、巨大な暖房設備があり、家全体を温めてくれるという。理想のマイホームを手に入れ、充実を噛みしめながら新居生活をスタートさせた清沢一家。だが、その温かい幸せは、ある不可解な出来事をきっかけに身の毛立つ恐怖へと転じていく。
差出人不明の脅迫メール、地下に魅せられる娘、赤ん坊の瞳に映り込んだ「何か」に戦慄する妻、監視の目に怯えて暮らす実家の兄、周囲で起きる関係者たちの変死事件。そして蘇る、賢二の隠された記憶。その「家」には何があるのか、それとも何者かの思惑なのか。
最後に一家が辿り着いた驚愕の真相とは?

 2023/日本/113分
監督:齊藤 工
脚本:倉持 裕
出演:窪田正孝 蓮佛美沙子  奈緒 窪塚洋介 他
原作:神津凛子「スイート・マイホーム」(講談社文庫)
音楽:南方裕里衣
製作幹事・配給:日活 東京テアトル
制作プロダクション:日活 ジャンゴフィルム
企画協力:フラミンゴ

配給:日活 東京テアトル
©2023『スイート・マイホーム』製作委員会 ©神津凛子/講談社

映画『スイート・マイホーム』オフィシャルサイト

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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