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【観るべき映画】犬愛好家が描く、捨て犬の笑える復讐劇! 『スラムドッグス』公開中! 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は『スラムドッグス』。飼い主に捨てられた犬が、仲間の犬とまさかの復讐を企てる。


犬のレジー、遊んでもらっているのではなく捨てられていた

犬を愛する飼い主には、恐怖と感動が間違いなくもたらされる映画。そして全人類が笑って泣ける映画、それが『スラムドッグス』という犬達の冒険活劇です。しかもこの映画、R指定みたいな言葉が連呼されるけれど蓋を開けたらPG12。ということは、12歳未満の子供には親の助言があれば見られるという区分! まぁ、お子さんと見る場合は、細かく説明が必要な『テッド』のようなジャンルと言えばどんな映画か想像つくはずです。けれど何故か泣ける! それは間違いなく真っ直ぐに人を愛する「犬」らしい純朴さからであり、「猫」だったらまた違うお話になっている気が。まぁ一応、私は猫飼いですが、そこは正直に申し上げる次第です。

だって自分は愛されている、遊んでもらっていると思った犬のレジーが、実は飼い主に何度も捨てられようとして、今まさに見知らぬ都会に居ることに野良犬や飼い主に見捨てられ気味の犬と出会って気づくという切なすぎるお話なんですよ! だけどそれを知ってしまい、純愛は恨みに変わり、飼い主が大事にしているアソコを噛みちぎろうと仲間と共に家を目指すんだから、これこそ犬でしか成立しないドラマチックなお話なんですっ。

たしかに今まで、不幸なご主人様と寄り添い続け、共に天に召される『フランダースの犬』とか、遠く離れた愛するご主人様に会いたいから長旅をする『名犬ラッシー』とか、ご主人様を救おうと奮闘する『ベンジー』とか、帰らないご主人様を待ち続ける渋谷の名犬「ハチ公」とか、ご主人様に再会したくて何度も転生する『僕のワンダフル・ライフ』とか、数々の犬と人との純愛がドラマや映画で描かれてきました。そこに涙は必須であり、幾多の困難を乗り越え、愛を叶える純粋無垢な犬の姿しか見てこなかったし、それを犬に求めてきた私たち人間がいます。

が、しかし、犬の輪廻転生まで描かれた先にどんな犬映画が今後生まれるのでしょうか? 行き詰まった先の新たな戦略が、犬の真実の生態と無邪気なまでのバカで賢い姿だったとは。確かにボールを投げれば追いかけ続け、繁殖シーズンには野外でだって腰を振る。ここに着眼しつつ、犬愛全開で、犬の無垢で真っ直ぐで勇敢な姿をコメディにした犬愛好家の脚本家、ダン・ペローが生み出したオリジナル脚本恐るべし。

しかも驚くべきことに、4匹のワンちゃんも周囲のワンちゃんもCGではなく本物の犬!それにはベテランのアニマル・トレーナーの力を借り、数ヶ月のトレーニングを経て、4匹が並んで歩いたり、ドアを蹴破ったり、様々な行動をカメラに収めることに成功。もちろん危険なスタントシーンなどは、合成などで犬の安全はしっかり守って映画を作り上げたとのこと。犬は可愛いし、健気だし、人間として学ぶことが多いと改めて実感した映画『スラムドッグス』。ちょっと刺激強めなブラックジョークだけれど、それもまた人や犬という動物の本能なのだから、えらく納得して楽しめてしまいましたとさ。
——伊藤さとり

☑全国公開中『スラムドッグス』

【あらすじ】ある日、犬のレジーは、飼い主ダグに家から遠い場所に捨てられてしまう。しかしピュアなレジーは、投げられたボールを取りに行く、いつもの “取ってこいクソッタレ”ゲームだと信じていた。家を目指してさまよっていると、ノラ犬界のカリスマ・バグと出会う。レジーの話を聞いたバグは「捨てられたんだよ。お前は今日から“ノラ犬”だ!」と断言する。飼い主ダグが最低なヤツだと気付いたレジーは、まさかの方法で復讐することを決意。「あいつの大切なチ〇コを噛みちぎってやる!」大胆なレジーの計画に賛同したバグの友達であるマギーとハンターも仲間に加わる。果たして、この復讐チン道中の行方はいかに!?

 2023/アメリカ/94分
監督:ジョシュ・グリーンバウム
脚本:ダン・ペロー
出演(声の出演含む):ウィル・フェレル、ジェイミー・フォックス、アイラ・フィッシャー、ランドール・パーク、ブレッド・ゲルマン、ウィル・フォーテ
製作総指揮:ニッキ・バイダ、ダグ・メリフィールド、ジェシカ・スウィッチ、ジュリア・ハマー
製作:フィル・ロード、クリストファー・ミラー、エリック・フェイグ、アディッティア・スード ルイ・ルテリエ、ダン・ペロー
日本語吹き替え版の声の出演:秋山竜次(ロバート)、マギー、森久保祥太郎、津田健次郎、森川智之

配給:東宝東和
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映画『スラムドッグス』公式サイト

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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