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【観るべき映画】石井裕也監督が、マスクの下に隠れた心を映し出す『愛にイナズマ』公開中! 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

伊藤さとり おすすめ映画 愛にイナズマ

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は公開中の『愛にイナズマ』。英語タイトルは『Masked Hearts』。石井裕也監督が、コロナ禍の「マスクに覆われた心」の中にある本音を映し出します。


世の中の不条理に立ち向かう

中堅世代で今の日本映画界を牽引する監督たちの共通点は、オリジナル脚本で映画を撮れていることです。そのひとりである石井裕也監督は『舟を編む』(2017)で日本アカデミー賞他多数の映画賞を受賞し、近年の『茜色に焼かれる』(2021)では主演の尾野真千子さんを始め、新人俳優達にも映画賞をもたらしました。まさに今、多くの俳優から「一緒に仕事をしたい」を切望される監督・石井裕也。
今月公開作だけでも宮沢りえさん、磯村勇斗さん、オダギリジョーさん、二階堂ふみさんが出演する実際の事件をモチーフにした映画『月』と、今回ご紹介する『愛にイナズマ』には、松岡茉優さん、窪田正孝さん、池松壮亮さん、若葉竜也さん、佐藤浩市さんがメインキャストとして登場し、他にも主演クラスの俳優が脇を固める豪華なキャスティングです。なんでこんなに有名俳優がこぞって出演するのかって、“石井裕也監督が書く脚本が面白いから”に尽きるのですよ。

愛にイナズマ 伊藤さとりのおすすめ映画

しかも本作『愛にイナズマ』は完全オリジナル脚本。松岡茉優さんが石井裕也監督の分身なのではと思う監督志望の主人公として、世の中の当たり前みたいな不条理に真っ向からぶつかっていく姿に、気づけば自分を投影してしまうほど泣けてくるのです。そうそう、主人公が映画監督志望だからとそこにフィルターがかかる必要はないくらい、世間一般の「理不尽に蔓延る大人の事情」という目には見えない力と闘おうと疑問を投げかけたり、家族という小さな集団の中で秘密裏にされていた問題から解放されようともがく日常的な物語。

愛にイナズマ 松岡茉優さん

それにコロナ禍という設定から生まれる、マスクで顔を隠し口を塞がれ、仕事を失った人々が過度のストレスから本音を叫ぶように、窪田正孝さん演じる空気の読めないピュアなひとりの男の存在が化学反応となって、彼に出会った人間達の純度が上がっていく設定も魅力的な脚本なのです。更に家族揃っての怒涛の掛け合いは、どこまでが脚本に書かれていたのか分からないほど遊び心のある言い回しのオンパレード。池松壮亮さん演じるお兄ちゃんの「恐竜話し」に至っては声を出して笑ってしまうほどですよ。

愛にイナズマ 窪田正孝さん

愛にイナズマ 池松壮亮さん

「仕方ない」で諦めてしまったら、尊厳さえも失ってしまいそう。一生懸命生きることは決してカッコ悪いことではなくて、最高に楽しいことなんだと教えてくれる映画『愛にイナズマ』。笑えて泣ける本気の純愛人間讃歌が、私達の疲れた心を奮い立たせてくれます。
——伊藤さとり

☑公開中『愛にイナズマ』

伊藤さとり おすすめ映画 愛にイナズマ

【あらすじ】どうしようもない家族は、最高の家族でした。
長年の夢だった映画監督デビュー目前で、すべてを奪われた花子(松岡茉優)。イナズマが轟く中、反撃を誓った花子は、運命的に出会った恋人の正夫(窪田正孝)とともに、10年以上音信不通だった家族のもとを訪ねる。妻に愛想を尽かされた父・治(佐藤浩市)、口だけがうまい長男・誠一(池松壮亮)、真面目ゆえにストレスを溜め込む次男・雄二(若葉竜也)。そんなダメダメな家族が抱える“ある秘密”が明らかになった時、花子の反撃の物語は思いもよらない方向に進んでいく…。

 2023/日本/2時間20分

監督・脚本:石井裕也
出演:松岡茉優 窪田正孝
池松壮亮 若葉竜也 / 仲野太賀 趣里 / 高良健吾
MEGUMI 三浦貴大 芹澤興人 笠原秀幸 / 鶴見辰吾  
北村有起哉 / 中野英雄 / 益岡 徹 
佐藤浩市

主題歌:「ココロのままに」エレファントカシマシ (ポニーキャニオン) 
プロデューサー:北島直明 永井拓郎 中島裕作
音楽:渡邊 崇

配給:東京テアトル
©2023「愛にイナズマ」製作委員会 

映画『愛にイナズマ』公式サイト

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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