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【実話映画】『あんのこと』レビュー 貧困や家庭環境に苦しむ女性の物語 公開中! 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

伊藤さとりの映画レビュー 河合優実『あんのこと』

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は、6月7日(金)公開の『あんのこと』。2020年、実際に起きた事件を基にした作品。底辺から抜け出そうとする“杏”を河合優実さん、更生を手助けする刑事を佐藤二郎さん、2人を取材するルポライターを稲垣吾郎さんが演じます。監督は『SRサイタマノラッパー』シリーズ、『AI崩壊』の入江悠、製作には『PLAN75』のスタッフが集結。


ひとりの女性に起こった悲しい出来事、
生きたいと思った理由を知っておきたい

“知ることの大事さ”というものがあります。例えば新聞を読むことの理由に、日本や世界の“今”を知り、自分が住んでいる国や地球が直面している問題に目を向けることで自分自身が考え、選挙を含む行動で未来を変えられるからです。そのきっかけのひとつにドラマや映画、ドキュメンタリーがあり、娯楽以外の社会問題を描くというアプローチで観客の感情に訴えていきます。まさに“実際にあった事件”の映画化というのがこのジャンルで、より観客が感情移入しやすいよう、理解しやすいようにフィクションを散りばめたのが劇映画になります。今回はそんな映画『あんのこと』に触れていきます。

映画『あんのこと』 伊藤さとりの映画レビュー

この出来事はコロナ禍の2020年5月上旬に起こり、新聞記事になりました。理由は壮絶な人生を送った少女のある決断でした。彼女の母親は売春、祖母は万引きの常習犯で、彼女もまた中学生の頃から売春、そこから覚醒剤を知ってしまいます。けれどある刑事との出会いにより彼女は更生していったはずでしたが、新型コロナウィルス感染症というパンデミックにより彼女の人生は再び翻弄されるのです。コロナ禍で職を失った人、自死した人々の数はそうではない年に比べ激増し、ニュースでも問題視されていました。居場所を失う恐ろしさを実感したあの時、まさに他人事ではない出来事でした。

伊藤さとりの映画レビュー 映画『あんのこと』 6月7日公開

しかしながら彼女の出来事を映画として再現するとなるとかなりハードなシーンが多いはず。それを目にするのは辛いことであり、演じる役者にもかなりの心労を与えます。それを踏まえて本作で入江悠監督が心掛けたのは「撮る必要があるものしか撮らない」「モデルの女性をかわいそうな存在と考えない」ということでした。こう考えると薬物摂取や売春をするシーンを具体的に撮る必要はなく、彼女がどんな思いで人生を歩んでいたのか、何故、更生したいと思ったのかという、感情にフォーカスしたショットの数々から物語が構成できるのです。

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

SPECIALIST

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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