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【映画】野木亜紀子『ラストマイル』8/23公開 満島ひかり×岡田将生が連続爆破事件に挑む【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画『ラストマイル』を伊藤さとりがレビュー

映画パーソナリティ・映画評論家の伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は、8月23 日(金)公開の『ラストマイル』。野木亜紀子さんが脚本を手がけ、塚原あゆ子さんが監督した「アンナチュラル」「MIU404」とリンクした世界観のサスペンス。主演の満島ひかりさん、岡田将生さんが、流通倉庫で起こる連続爆破事件に挑みます。


伊藤さとりさんレビュー

日本ドラマに欠かせない野木亜紀子さんが手がける

日本のドラマを語る際、野木亜紀子という名前を知らない人は少ないのではないでしょうか。彼女が描く登場人物は皆、クセが強めだからその人達による些細な会話だけでも面白い。更に専門職ではクレバーなので専門用語が飛び交うことで観客である私達の学びにもなるし、主人公が口にする思いは多くの人の偏見を消す力まである。それが野木亜紀子という脚本家の個性な気がします。
これはもう間違いなく反骨精神と人間ウォッチングの賜物で、そんな彼女の魅力をエンターテインメントに昇華する新井順子プロデューサーと、その世界観を詳細に実写化する塚原あゆ子監督というドラマ「アンナチュラル」(2018)や「MIU404」(2020)を生み出したチームが再びタッグを組んだのだから見ないわけがない。それが8/23公開の映画『ラストマイル』です。

映画『ラストマイル』の1シーン

物語の舞台は流通業界。主人公は、満島ひかり扮する世界展開するショッピングサイトの関東センター長となったエレナと、岡田将生扮するチームマネージャーの孔。考え方も性格も違うことで対立する二人が、自分達の倉庫から出荷された荷物が到着と同時に爆発する事件を防ぐべく奮闘するのですが、興味深いのは主人公なのにエレナの行動が怪しいという、捻った脚本の点。このことから映画は、事件解明の裏に隠された真実を探る物語と言えます。

他にも、無差別に思える大規模爆破の恐怖と共に、出荷元の人々だけでなく、運送会社の勤務問題、委託ドライバーの生活状況、そして荷物を受け取る人の家庭問題にも触れているので、ここはやはり野木亜紀子らしい人間の心に触れる作品でした。

映画『ラストマイル』 ブラックフライデーの流通倉庫に爆発物が送られてくる

そんな脚本を、冒頭から道路を走るトラックを映し、運転席に座る歳のいった親子の会話を見せ、彼らの労力により「楽しみにしている荷物が届く」ことをしっかり伝えるショットを作る塚原あゆ子監督。終始流れる音楽は時に不穏な音色を映像に漂わせ、顔の見えない犯人の恐ろしさを上空から映した大規模爆破から伝えることで作品にスケール感を与えています。更にディーン・フジオカ、阿部サダヲといった主演クラスの俳優や、火野正平や宇野祥平、安藤玉恵といった演技陣が脇を固め、主人公以外の登場人物の心情にも興味を持つのです。

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

SPECIALIST

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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