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男闘呼組復活ライブに狂喜乱舞!【菊地陽子の40代からの推し活道】

いくつになっても、音楽では夢を見られる。
男闘呼組復活ライブで共有した僥倖

すべての痛みや悲しみ、喜びを共有できるのが推し
29年前――。いったい、あなたはどんな音楽を聴いて、何を思っていただろうか?

10月15日、私は、東京ガーデンシアターで開催されたコンサート「男闘呼組1988 第二章」に“参戦”した。アイドル事務所所属のバンドであるとか、29年ぶりの再結成とか、所詮はソングライターから楽曲提供されたロックじゃないかとか、そういう余計な情報をシャットアウトして、すべての音楽好き、バンド好きに、「ぜひ見てほしい!」と声を大にして言いたくなるライブだった。しょっぱなからメチャクチャに痺れて、刺さって、アガって、最後は泣けた。とにかく、人生であんなに人の喜びや幸福が伝染したのは初めてだった。

人生で起こることは、自分だけのオリジナル。でも、それがカッコいい音楽で彩られるようなドラマチックな出来事かどうかはまた別の話だ。推し活をしていて楽しいのは、その推しの人生にある出会いや別れ、発見や驚きや気づきが、自分の人生にも彩りをくれることだ。もちろん、生きていれば家族(※ペットも含む)や親戚、恋人や友人や仕事仲間との関係性の中で、立ち直れないぐらい傷つくこともあれば、信じられないような僥倖と出会うこともある。そして、誰かとその感情を分かち合うことで、関係性は深くなる。

推し活をすると、その関係性の中に「推し」が加わるが、その推しは、自分の人間関係の中で、誰よりも華やかで、誰よりも過酷な人生を歩んでいることが多い。男闘呼組のヒストリーは、ジャニーズのアイドルグループの中でも、かなり過酷でかなりドラマチックだ。デビュー前、メンバーが10代半ばの頃に成田昭次、高橋和也、岡本健一をメインにジャニーズ内でバンドが結成されたが、後から加入した前田耕陽の楽器パートはなかなか決まらなかった。デビューまでに4年かかったことも、当時のジャニーズとしては異例の長さ。『ロックよ、静かに流れよ』という4人が主役の青春映画は、長野の松本市に1ヶ月も合宿して制作され、青春映画の傑作と評価された。88年の8月にデビューし、紅白歌合戦には2年連続で出場、89年には東京ドームでコンサートも開催した。ところが、93年、高橋和也の突然の解雇に伴い、男闘呼組は活動休止となってしまった(※この解雇については、いまだに理由が明らかになっていない)。

いちばん目立つ場所に置かれた中居正広からの花

正直、彼らが活動していた頃の私は洋楽に夢中で、アイドルに対しては冷ややかな目で見つめていた。アイドルの音楽をまともに聴きもせずに、世の「音楽好き」とされる人たちが「いい」というものを積極的に追いかけていた。自分が好きなものよりも、世界で流行っているものの方に、価値があるような気がしていた。しかもその頃は、東京ドームや武道館、横浜アリーナに外タレがガンガン来日していた時代だった。ローリング・ストーンズやU2、ビリー・ジョエルなど。「行きたい!」と思うライブがたくさんあった。でも、男闘呼組が解散した翌年、私はたまたま音楽番組でSMAPを見て、それ以来、ズブズブと今でいう沼にハマってしまったのだった。何が言いたいのかというと、つまり私は男闘呼組の音楽は、リアタイではほとんど聴いていなかったのだ。それが、中居正広が欠席した「音楽の日」で、スーパーがつくほどのイケおじになった男闘呼組の歌と演奏を聴いたとき、復活ライブをぜひ見てみたいと思った。

当日、会場である東京ガーデンシアターに着くと、入り口にはたくさんの花が並んでいた。中でも、いちばん目立つところにあって、多くのファンが周りを囲み、写真を撮っていたのが、「中居正広」から贈られてきた花。今回のツアーは、昼の部が「第一章」、夜の部が「第二章」と呼ばれ、若干セットリストも違っていたようだが、この日の「第一章」には、現役ジャニーズの木村拓哉や生田斗真、佐藤アツヒロが見学に来ていたという(写真がそれぞれのインスタにあがっていた)。私が入った15日の「第二章」にも、綾小路翔、GLAYのTAKUROとHISASHI、MISIAなどのトップミュージシャンたちが見学に来ていたことが後でわかった。

推し活人生の中でもエモ中のエモな景色

アーティストは、「ファンの人に、いろんな景色を見せたい」などと言うことがあるけれど、私が「男闘呼組1988 第二章」で見たあの景色は、まさにエモ中のエモ。それまでのどんなライブよりも、ステージに立っている4人が楽しそうで、嬉しそうで、幸せそうだった。29年のときを経て、音楽で心を繋げることができるなんて! 最後の挨拶での岡本の、「世界中では、戦争とか、いろいろ大変なことが起こっているけれど、若い人たちは、頑張って生きてください。生きていれば、きっといいことがあります。ある程度歳をとってしまった人は……長生きしましょう!」という発言は、29年前の自分に向けてのメッセージだったと思う。今回のライブで、いちばん大きな歓声で迎えられた成田は、やはり最後の挨拶で、「ジャニーさん、メリーさん、ありがとう」と言って男泣きした。つられて私も泣いた。

約30年前、まだ洋楽にかぶれていた私は、東京ドームで開催されたローリング・ストーンズのコンサートで、数々の世界的ヒット曲に体を揺らしていた。そのときは、「ミック・ジャガーを、キース・リチャーズをこの目で見たい!」というミーハー心を満たしてくれたけど、心は揺さぶられなかった。10月15日に見た4人のイケおじと4人のボーカリストが生み出す音楽は、日本語の、反骨芯溢れる、青臭いロックだけれど、ものすごく私の心を揺さぶった。33年前にタイムスリップできるなら、外タレじゃなくて、男闘呼組のドーム公演が見てみたかったと心から思った。
「音楽」に価値があるかないかを判断するのは他人じゃなくて自分だ。大人の推し活は、誰かの評価に影響されることなく、自分がいいと思ったものを自分の意思と財力で追いかけることができる。彼らの音楽は、間違いなく2022年の私の日常に彩りをくれた。あの素晴らしい景色が見られるのは1年限定だという。「最近、いいことないな」と思っている人には、是非男闘呼組のライブをお勧めしたい。29年の歳月が生み出してくれた人間としての成熟。音楽としての成熟。それがもう美しすぎる奇跡なのだ。曲なんて知らなくても、その人間力とチーム力を見聞きするだけでも楽しめる。短期の推し活、または大人の推し活入門としてもピッタリ。とにかく大勢の人にあの奇跡を体験してほしい。生きてさえいれば、きっといいことがあるってことを。

イラスト=本田佳世

菊地陽子フリーライター

アイドルや俳優、アーティストを中心に、これまで述べ8000人以上の「旬な人物」に取材・インタビュー。誰よりもファンを理解し、寄り添う文章に涙する女子が後を絶たない。GLOWオンラインでは、“推し”をテーマに、「旬な人物」に対する思いから日々感じていることを赤裸々に紹介。

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