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【映画】2/23公開『逆転のトライアングル』無人島ではサバイバル能力が高い方が偉い!【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画 逆転のトライアングル

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は2月23日公開の『逆転のトライアングル』。インフルエンサーのヤヤとモデルのカールカップルが乗り込んだ豪華客船クルーズが無人島に漂着。お金持ちたちはサバイバル能力がなく……。


豪華客船が無人島に漂流、そのとき人はどうなるか?

昨年、カンヌ国際映画祭でお披露目された際、話題騒然となり最高賞のパルムドールを授賞したリューベン・オストルンド監督の映画『逆転のトライアングル』。実はオストルンド監督は、前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に続き、2作品連続でパルムドールを取っている強者。しかも3月13日(日本時間)に授賞式となる第95回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされ、結果も楽しみな監督の新作です。

では何故、話題騒然となったのか? それはもう人間の中身を全て見せますと言わんばかりのエゴ丸出しのヒエラルキーをひっくり返したら?という逆三角形の構図を毒っ気たっぷりに描いているからなんですよ。まず冒頭からファッションモデルのオーディションシーンでこの映画のテーマを見せつけてくるのがまたイジワルめいていてGood!(苦笑)

「高級ブランドは無愛想なイメージ」というのでキメ顔をするモデル達が、「お安い服の撮影は?」とスタッフに尋ねられてニッコリ笑うこのシーンが伏線となり、物語は豪華客船へと移ります。お金の為に笑顔で客の希望に応えようとスタッフを活気づける船員。なかには“明らかに悪意でしょ?”というような行為を指示する上客に屈するスタッフまで映し出されるのですが、やがて事態は思わぬ方向に。船が難破して辿り着いた無人島でのサバイバルは人のエゴを剥き出しにするのです。

映画 逆転のトライアングル

映画 逆転のトライアングル

もしもお金の価値が無くなったらどうなるのか? それこそ生き延びる為の知恵を持つ者が優位に立つ。ではその人に気に入られる為には何が必要か? それには相手の欲求を満たす行為?! そんな逆算したような発想で描かれるのは、人間の三大欲求と言われる「食欲」「睡眠欲」「性欲」の争奪戦。なのに品がある画というのも摩訶不思議。その理由は、オストルンド監督がこの3つの欲求そのものに興味があるのではなく、人間の愚かさこそが滑稽であり、誰もがエゴイズムを持っているのだという愛情溢れる人間探求で脚本が構築されいるからなんです。しかも登場人物が自分の写真を撮ることに夢中の人気インフルエンサーやルッキズムに囚われたモデル、自身が大富豪であると豪語する夫婦という「自己顕示欲」を持つ人々ばかり。さて、あなたの中にはどんな「欲求」が眠っているのか?映画を見ると“それ”に気づかされるかも?

2月23日公開『逆転のトライアングル』

映画 逆転のトライアングル

【あらすじ】モデル・人気インフルエンサーのヤヤと、男性モデルカールのカップルは、招待を受け豪華客船クルーズの旅に。リッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。しかしある夜、船が難破。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態に追い込まれる中、ヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃婦だった――。

2月23日(木・祝) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー!

監督:リューベン・オストルンド(『フレンチアルプスで起きたこと』、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』)
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソン 他
配給:ギャガ

Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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