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【映画】松山ケンイチが映画化を熱望・介護をテーマにしたミステリー 公開中『ロストケア』【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。公開中の『ロストケア』。殺人を犯した介護士と、市の事件を担当する検事、それぞれに自分の正義がある。介護や介護家族の現実も描いた社会派作品。


誰にでもやってくる老後、誰もが持つ正義……

俳優・松山ケンイチさんが10年前に原作に出会い、映画化を熱望して『こんな夜明けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)『老後の資金がありません!』(2021)の前田哲監督と企画を暖めてきた作品『ロストケア』。そんな原作は2013年に刊行された葉真中顕氏のデビュー作であり、42人もの人を殺めた介護士の男の心理を探る物語として第16回日本ミステリー大賞新人賞を受賞しました。

主人公は訪問介護センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)。ある日、民家で老人と介護士の死体が発見され、その介護士と同じ会社で働くに斯波が捜査線上に浮かび上がりますが、それを突き止めたのは検事の大友秀美(長澤まさみ)でした。彼女は斯波が働いた介護センターでの老人の死亡率の高さに目を付けたのですが、同僚や後輩だけでなく、依頼主からも信頼も厚い斯波の殺害動機が分からず、取調室で互いの視点からの「正義」について対決することになります。

脚本は『ストロベリーナイト』(2013)や『四月は君の嘘』(2016)など、人気ドラマ、映画を手掛ける龍居由佳里さん。心に静かに寄り添うようなセリフの数々と、現実を見つめざる得ない状況から見えてくる愛情からの言葉に涙が止まらなくなる本作は、誰もがいつか考えることになる老後や介護についてケアする側の声に出せない気持ちを紡いだ作品に。

更に脇を固めるキャストの豪華、検察事務官には『蜜蜂と遠雷』(2019)で報知映画賞新人賞他を受賞した鈴鹿央士さん、更には坂井真紀さんや戸田菜穂さん、柄本明さんという顔合わせが実現。高齢化社会と言われる現代で、自己責任という言葉の重さや、正義について問う、現代社会に向けられた問題作が誕生しました。果たしてあなたはラスト、松山ケンイチさん演じる斯波からの言葉になんと答えられますか?


公開中『ロストケア』

【あらすじ】早朝の民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見された。捜査線上に浮かんだのは、センターで働く斯波宗典(松山ケンイチ)。だが、彼は介護家族に慕われる献身的な介護士だった。検事の大友秀美(長澤まさみ)は、斯波が勤めるその訪問介護センターが世話している老人の死亡率が異常に高く、彼が働き始めてからの自宅での死者が 4 0人を超えることを突き止めた。真実を明らかにするため、斯波と対峙する大友。すると斯波は、自分がしたことは『殺人』ではなく、『救い』だと主張した。その告白に戸惑う大友。彼は何故多く
の老人を殺めたのか?そして彼が言う『救い』の真意とは何なのか? 被害者の家族を調査するうちに、社会的なサポートでは賄いきれない、介護家族の厳しい現実を知る大友。そして彼女は、法の正義のもと斯波の信念と向き合っていく。

出演:松山ケンイチ、長澤まさみ
鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、峯村リエ、加藤菜津、やす(ずん)、岩谷健司、井上肇、綾戸智恵、梶原善、藤田弓子、柄本 明
原作:「ロスト・ケア」葉真中顕 著/光文社文庫刊
監督:前田哲 脚本:龍居由佳里、前田哲
主題歌:森山直太朗「さもありなん」(ユニバーサル ミュージック)
音楽:原摩利彦
制作プロダクション:日活 ドラゴンフライ
配給:日活 東京テアトル

©2023「ロストケア」製作委員会

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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