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【映画】4/14公開『聖地には蜘蛛が巣を張る』実際の連続娼婦殺人事件をベースに映画化【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は『聖地には蜘蛛が巣を張る』。イランにおけるイスラム教の聖地・マシュハドで起きた連続娼婦殺人事件を、第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを獲得した『ボーダー 二つの世界』のアリ・アッバシが描く。


何が正しいのか、育った環境で決まってしまう

正義とはなんなのか? 巷に溢れるニュースを目にする度に、自分の中での「正義」がムクムクと膨れ上がります。けれどその「考え」は果たして正しいのか? そこにメスを入れるような問題作が、2000年から2001年にかけてイランで起こった連続殺人事件をベースにした映画『聖地には蜘蛛が巣を張る』です。

イランの聖地マシュハドで娼婦16人が殺害される連続殺人事件が発生。「街を浄化する」という犯行声明を出した犯人“スパイダー・キラー”は、自らの正義のもと殺人を繰り返していきます。しかもこの犯人を英雄視する市民もいたり、捜査を続けようとしても見えない圧力があり、悩んだ女性ジャーナリストのラヒミはとんでもない手段に出るのです。

監督のアリ・アッバシがイランに住んでいた頃に目にした社会状況を映画として描いた本作。当時、この犯人が敬虔な信者であり、彼の行動を讃える人々も間違いなく存在したことから、イランに根付くミソジニー(女性軽視)についても描きたかったそう。娼婦は「汚れ」という考えから社会から排除すべきという思考へと進んでいった犯人と、それに同調する人々の中には女性や子供まで存在することが映画をより恐ろしいものに変えていました。

そして本作から改めて気付かされるのが「親の背中を見て子は育つ」という生育環境の大切さについて。それは親だけでなく、多くの大人が「正しい」と言っている状況を見ると、それが正解だと思ってしまうのが、まだメタ認知能力が完全ではない子供たちなのです。だからこそ私たち大人が「偏った思考を持ってはいけないこと」を日々、意識し、「排除してもいい人間などいないこと」をしっかりと伝えていかなければいけません。実はイランだけの問題ではなく、私たち自身の周りにもある偏見全般に気付くことが、世界平和に繋がっていくんですよね。

———伊藤さとり


4/14(金) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開

【あらすじ】

聖地マシュハドで起きた娼婦連続殺人事件。「街を浄化する」という犯行声明のもと殺人を繰り返す“スパイダー・キラー”に街は震撼していた。だが一部の市民は犯人を英雄視していく。事件を覆い隠そうとする不穏な圧力のもと、女性ジャーナリストのラヒミは危険を顧みずに果敢に事件を追う。ある夜、彼女は、家族と暮らす平凡な一人の男の心の深淵に潜んでいた狂気を目撃し、戦慄する——。

公式サイトをチェック!

2022年/デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス/118分/字幕翻訳:石田泰子/デンマーク王国大使館後援
監督・共同脚本・プロデューサー:アリ・アッバシ(『ボーダー 二つの世界』) 
出演:メフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ
配給:ギャガ

©Profile Pictures / One Two Films

 

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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