2/10公開 映画『エゴイスト』舞台挨拶レポート・鈴木亮平「最近やっと役ではなく氷魚くんとして見られるようになった」【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】
執筆者:伊藤さとり
目次
映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介するこの連載。今回は映画『エゴイスト』。高山真さんの同名作品を映画化したもので、浩輔(鈴木亮平さん)と龍太(宮沢氷魚さん)の愛し合う時間、龍太の母妙子(阿川佐和子さん)との関係を描く。東京国際映画祭での上映やアジア・フィルム・アワードでのノミネートなど注目の作品。1/19に行われた舞台挨拶に潜入。登壇は鈴木亮平さん、宮沢氷魚さん、阿川佐和子さん、ドリアン・ロロブリジーダさん、松永大司監督、MCは伊藤さとりさんです。
プレミア上映会のお客様にご挨拶
MC 原作の高山真さんの作品を読まれている方もいるかもしれません。監督がほれ込んで映画化致しました。それでは早速映画『エゴイスト』プレミア上映会を行ってまいります。皆さんから今の気持ちもふまえましてご挨拶いただきます。
鈴木亮平さん
「斉藤浩輔役を演じました鈴木亮平です。色んな意味で非常に美しい映画ができました。ドキュメンタリータッチなんですけどすべての場面、色もすべてが美しくて。僕たち2人がいる空間に皆さんもずっと一緒にいたいなと思うような映画になったと思います」
宮沢氷魚さん
「中村龍太を演じました宮沢氷魚です。この作品撮ったのが一昨年の夏頃だったんですけど、ようやく皆さんに観てもらえるということで今日の日をとても楽しみにしていました。亮平さんも仰っていたように、美しくて心にグッとくる作品」
阿川佐和子さん
「中村妙子、龍太の母親役を演じました。引き受けるまでは不安や心配があったんですけど、現場に入ってから今に至るまで、なんてこんなに人生で素晴らしい時間をすごせたのかなという気持ちでいっぱいです。出来た映画が優しさに溢れている。皆さんがこの映画の優しさを感じ取って頂けたら」
ドリアン・ロロブリジーダさん
「皆様ごきげんよう。亮平さん演じる浩輔の親友たけしを演じさせていただきましたドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダと申します。本編ではこういった姿ではなくすっぴんで出演させていただいております。本編で私を探してみてください」
松永大司監督
「監督の松永です。本当に素晴らしいキャストとスタッフとともに作り上げた作品になります。約一か月後に公開なんですけど、まずは今日見て頂いた方の心に届いていろんな人に広めていただけたらと思います」
アジア・フィルム・アワードで
3部門ノミネートされた
MC 改めてここに立たれてどんな気持ちですか。
松永 アクが強いですよね。キャラが立ってる。あとでかい! 久しぶりに顔を合わせて改めていいチームで映画が作れたな、と。昨年の東京国際映画祭でお披露目して色んな方に観て頂いて。3月にはアジア・フィルム・アワードで亮平と氷魚ふくめて衣装デザインもノミネートされたことが本当にうれしくて(会場大きな拍手)。なぜ選ばれたのかという事も映画を観てもらえればわかると思うんです。
MC アジアのアカデミー賞と言われる「アジア・フィルム・アワード」で主演男優賞、助演男優賞、衣装デザイン賞(篠塚奈美)でノミネートということでおめでとうございます(会場改めて拍手)。
鈴木 まさかそんな大きな賞でノミネートして頂けるとは。
宮沢 本当にうれしかったですね。
阿川 いつわかるんですか。
松永 結果は3月12日です。
「原作を読んで共通点を感じ、
自分がやるべきご縁を感じた」――鈴木亮平さん
MC 観て感無量、原作を読んで感無量になってしまいましたが色々とお話を伺いたいと思います。亮平さん出演の決め手となった理由はなんだったんでしょうか。
鈴木 原作がとにかく素晴らしくて。原作の高山真さん・劇中の浩輔がおこがましいんですけど自分に似てるなと思ったんですよね。作者の方との共通点もあったりして、これは自分がやるべきご縁なんじゃないかなって。自分を客観的に見ているのが事細かに書かれていて、心の声が使えない映画になった時にどういうものになるんだろいうという好奇心がありましたね。例えばその…あ、観る前ですよね。言わないでおこう。
ドリアン あんまり言っちゃだめよ。
MC 宮沢さんもすぐに出演を決められたと聞きましたが。
宮沢 数年前にエゴイストのお話をいただいて、原作を読んだ時に何て美しい物語なんだろう。自分が関わることによってひとりでも多くの人に届くのであれば絶対出たいっていう。その時は作品にはならなくて、2年3年たって改めて(お話をいただいて)運命的なものを感じて。やっと皆さんに観て頂けるものに参加できるんだと思って、夢のような瞬間です。
阿川 演技をする仕事は本業ではないし、経験も少ないのに監督やプロデューサーの明石さんからお話を頂いて。お会いしてお話を聞いてみようと初めて面会した時に監督はかっこいいし、明石さんもセンスが良さそうな素敵な人。一緒に仕事したいなと乗っちゃう。(引き受けて)まもなく後悔したのが、監督のことを調べたら『ハナレイベイ』を作ってらして。吉田羊さんからものすっごく厳しい監督ですって伺っていたんです。現場に出て、こうやって物を作っていくのか、こうやって演者の心を開いたり発声させたりするのかと監督の演出の仕方が面白くって。面白く過ごしました。
MC ドリアンさんは映画初出演なんですよね。
ドリアン そうなんです。私は原作の作者である高山真さんと親交がございまして。彼は2020年の秋に亡くなっているんですけど、亡くなるまでの3年間ほどは濃密な時間を過ごさせていただきました。原作が発売されたのはさらにずっと前なんですけど、その時から読んで素敵な作品だなというものを抱いていたんですね。ある日ご連絡を頂いて、私も氷魚さんと同じように出ます、絶対出ますと申し上げて。彼の作品が映画化になって素晴らしいキャストの方、スタッフの方の手によって素晴らしい作品になるお手伝いをちょっとでもできることがとても嬉しかったし光栄でした。
MC 亮平さんも嬉しいですね。
鈴木 ドリアンさんとは長い付き合いになりまして。初めに高山さんの人となりをお伺いする会を開いて頂いた時に初めてお会いして。この場所に一緒に立てているのが感動的ですね。
ドリアン 場違いなのは承知ですけどいさせていただきます。
MC そしてこの原作をどんなところに惹かれて作ろうと思ったんですか。
松永 原作で妙子さんが浩輔に愛の在り方を話す時があるんですけどそのセリフが自分もその通りだなと思いました。周りが色んなことを言うんだけども当人たちがどう思っているかがいちばん大事という、すごくすごく当たり前のことをちゃんと書いてくれているなと。その大切な言葉を映画にしてみたいなという思いがありました。
MC LGBTQ+インクルーシブディレクター、インティマシーコレオグラファーの方などゲイの当事者の方が現場にいて助けられたと伺っています。
鈴木 このお二方が現場にいてくださらなければ映画が出来なたっただろうなというくらい頼りにしていて。ゲイである描写がリアルであるかどうかをチェックし、かつそれがリアルだったとして世間に与える影響がどうか、差別や偏見を助長しないかチェックしてくださって。脚本の段階や座談会も開いてくださって。無知だった自分にいちから教えてくださいました。宣伝内容の文言から関わってくださって。縁を感じて出たいなと思ったけど、きちんとしたクィア映画として成立させられるんだろうかと思った時に、彼らがいてくれることドリアンさんはじめキャストの方をキャスティングしてくださることでこの映画にトライしてみようと思えました。
宮沢 自分の発した言葉とか行動が正しいかのかどうかという判断はできなくて。それを指導してくれることによって自由にお芝居が出来て、たくさん助けられました。
「亮平さんではなく、浩輔さんに
引っ張ってもらい、救われた感じ」――宮沢氷魚さん
MC お二人の関係がずっと見ていたいくらい愛おしかったんですけど共演はどうでしたか。
宮沢 不思議なもので、現場にいるときは亮平さんという感じじゃなくそこに浩輔さんがいた。支度している時もお昼休憩も常に。僕は中村龍太という人物がそこにいて。浩輔さんがいて。その関係性というか信頼関係ができていたので。浩輔さんに救われた、引っ張ってもらったという感覚が強いかも。
鈴木 松永さんの演出法がけっこう特殊で、台本にないことも喋ってもいいし、喋らなくてもいいし。自由というか、こういう気持ちでここに向かってくれれば、浩輔なりのやり方でお母さんにお金を渡してください、お母さん受け取りたいと思うまで受け取らないでくださいという演出。ある程度その人でいないと対応できない。
阿川 大変だったねー。
鈴木 大変でしたね。ぜんぜん受け取ってくれないんですもん(笑)。お互いがお互いを俳優で見ないというか、龍太は龍太、浩輔は浩輔として見てるという関係が求められていたので。最近ですもん、氷魚くんを氷魚くんとして見られるようになったの。龍太だったもん。
MC 印象に残っているシーンがあって。冒頭のあたりの2人の関係性がシュッと変わるところの、浩輔さんの表情があるんですよ。監督がある演出をされたんですよね。
宮沢 予告の中にもあるんですけど、歩道橋で先に浩輔さんが歩いていて僕が浩輔さんと呼んで振り返ったところにチュッとキスをするシーンがあるんですけど。何回かテイクを重ねて毎回浩輔さんと言っていたんですけど4、5回目くらいに、亮平さんて言ってと。亮平さんの驚いた(表情)というか、何回もテイク重ねていると慣れてきちゃうというか、そこを監督が新しい反応を求めてのことだと思うんですけど。そういう指示を出してくれる監督があまりいないので僕は驚いたんですけど。それもあって新しい浩輔さんの表情が見れたと思います。
鈴木 後半になるとそういうことが多いので慣れてきましたけど。あとサプライズが多いんですよね。待ち時間ボーッとしてたりして静かだなと思ったらカメラがあって撮られていたり。後から聞くとスタッフ間だけで「まわそう」という合図を決めていた。自然なところを撮られていくというのが面白い演出でした。
松永 ドリアン、阿川さん、親友役の子たちも含めて、自分であるということを持ってる方たちがどうやったら引き出せるかということを非常にスタッフと考えながら撮っていったと思います。ドリアンとか映画初出演だと思えないくらい素晴らしいんですよ。
ドリアン なんですって!
鈴木 さすがにどの人かってヒントがあったほうが探しやすいんじゃない。
ドリアン 坊主です。で、よう喋るんです。すぐに見つけていただけると思います。
MC ドリアンさんや浩輔さんの飲み会の場が楽しくて楽しくて。
松永 楽しいんですよ。今回の作品ほとんどワンシーンワンカットといってカットをかけずに撮るんですけど。あの最初の居酒屋のシーンがあるんですけど、20分とか25分くらいずーっと喋っているまま4、5回撮るんですけど、本当に楽しくてスタッフ誰も飽きずにずーっと見ていられる
ドリアン 基本下ネタなんですけどね。
MC 他のみなさんも映画初出演だったんですよね。
ドリアン お芝居経験が無い方が大半だったので、そこは松永監督の技法というか手腕と、浩輔龍太としてひとりのゲイとしていていただけたおかげで私たちも気負わずにふだん新宿2丁目で繰り広げているような情景をカメラの前で繰り広げられた。
MC 阿川さんはどんな思い出がありましたか
阿川 基本的に住んでいる狭いアパートでのシーンが多くて。そこに大きないい男が2人も来るっていう。モニターに映る映像を見ていたら、いつもうちで台所でご飯作っていたらピンポンて鳴っていい男が入ってきたっていうそのままの延長のような感じ。とにかく気持ちで妙子として、息子や浩輔さんを接待するかって。麦茶出さなきゃとかおばさんに徹することができた。セリフより気持ち、心の底から妙子にならないとできないぞ、と突きつけられた。全部できていたわけでは無いけど、この経験は本当に面白かった。
松永 ほんとに素晴らしくて。阿川さんに対しての演出は少ししかなくて。時々亮平のことを浩輔じゃなくて鈴木亮平として見ちゃっている。息子の好きな人だったってことじゃなくて鈴木亮平として見ている目がある時があって、その時だけ阿川さん、て。
阿川 だってかっこいいのよ。上半身脱いだりしたら、いくらお母さんだってやだ素敵って思うじゃない。
松永 そういう時だけはダメですって。それ以外は一切。
MC あっという間にお時間になってしまいましたので代表して鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんからメッセージを
宮沢 この作品の中には日常のささいな幸せこがたくさん詰まっていて。心から温かいものを感じて、なんて幸せな気持ちなんだろうと思いました。作品を通して改めて愛とはなんなのか、愛とは果たしてエゴなのかたくさん考えるきっかけがあると思います。2月10日公開なので、1人でも多くの人に見ていただきたいのでどうぞ『エゴイスト』をよろしくお願い致します
鈴木 僕にとって非常に大切な作品です。色んなことがありました、出来上がるまでに。ネタバレにはならないと思いますけど、最初に『エゴイスト』とタイトルが出て最後に『エゴイスト』というタイトルで終わります。その時にご自分の中で最初に感じられてるエゴイストという言葉への印象と最後に出た時の印象が少し変わっていれば、この映画が皆さんに何かしらの影響を与えられたかなと思います。この映画を観てくださって何かを感じたらぜひ、周りの方々に話し合ったりしていただいて。今はSNSありますので、僕たち見てます、『エゴイスト』だけにエゴサーチします。ほんとにこの映画どう思われてるかなって僕たちすごく気になっていて。いいことだけじゃなくていいです。セクシャリティの描き方、日本映画もっといけるんじゃないかということがあれば書き込んでいただいて。原動力にして業界が前に進むきっかけになりますので。
最後にMC伊藤さとりさんから嬉しい告知が‼
この後MCから、アジア・フィルム・アワードでの3部門ノミネートを記念した、先行上映が告知された。※テアトル新宿にて2/4(土)、2/5(日)に1日1回上映。詳しくはテアトル新宿サイトにて
2/10(金)公開 映画『エゴイスト』
2月10日(金)公開
【あらすじ】14歳で母を失い、田舎町でゲイである自分の姿を押し殺しながら思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、自由な日々を送っている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである母を支えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の母も交えながら満ち足りた時間を重ねていく。亡き母への想いを抱えた浩輔にとって、母に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし2人でドライブに出かける約束をしていたある日、何故か龍太は姿を現さなかった。
2022/日本/120分
監督・脚本:松永大司 原作:高山真「エゴイスト」(小学館刊)
出演:鈴木亮平 宮沢氷魚
中村優子 和田庵 ドリアン・ロロブリジーダ/柄本明/阿川佐和子
脚本:狗飼恭子
音楽:世武裕子
制作幹事・配給:東京テアトル
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
この記事を書いた人
邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。
- Website https://www.itosatori.net/
- Instagram @ito_satori/
- X @SATORIITO
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