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家庭用AIロボットと暮らす近未来を暖かみのあるビジュアル、音で描く映画『アフター・ヤン』をチェック!

執筆者:GLOW編集部

前作で長編デビューとなる『コロンバス』や、ビデオエッセイが人気のコゴナダ監督の『アフター・ヤン』が公開中。近未来を舞台に、動かなくなった家庭用ロボット・ヤンとその家族を描いた物語。その世界は近未来と聞いて想像するものではなく、自然な目線やインテリアなど心地いいもの。ロボットとの共生、多様な暮らし方、人間とはなにか、幸せとは?など哲学的に語りかけてくる映画です。


『アフターヤン』のストーリーは?

今から数十年先の未来。ジェイク(コリン・ファレル)、妻のカイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、中国系の養女ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)の一家は、もうひとり大切な“家族”、“テクノ”と呼ばれる精巧な家庭用ロボットのヤン(ジャスティン・H・ミン)と仲良くすごしていた。

 そんなある日、ヤンが突然故障して動かなくなってしまう。ミカはふさぎ込み、ジェイクは修理できないか何軒か店を訪ねるが、修理の見込みが立たない。そんな時に、ヤンの体には1日数秒間の映像を記録する特別な機能が備わっていることが発覚。ジェイクはその膨大に記録されたメモリを再生し、ヤンの記憶をたどる。映像はヤンの主観視点によって、まだ赤ん坊だったミカが成長する過程や緑豊かな自然の風景などが記録されていた。ヤンがジェイクの家にやってくる以前に撮られた動画もあり、ライブハウスやカフェにいる若い金髪の女性(ヘイリー・ルー・リチャードソン)が映っていた。科学的にはありえないことだが、それらの動画はまるでヤンが彼女に“恋している”ことを物語っているかのようだった。

ヤンが元通りに再起動する可能性が絶望視され、カイラもミカもヤンの不在を悲しむなか、ジェイクは“謎の女性”の素性を探り始める。ジェイクの家族にとってかけがえのない存在である、ヤンの過去を知るためにも。

やがてジェイクの調査が行きづまりかけたとき、エイダと名乗る“謎の女性”が忽然と姿を現す。ヤンとエイダはいかにして出会い、どのような関係を育んだのか。そしてエイダが打ち明けるヤンの真実とは……。

近未来のオンライン通話は、まるで目の前にいるような臨場感で描かていれる


心地いいインテリアとファッションに注目

ジェイクの家のインテリア、登場人物の着ているものなど、こんな暮らしがしたいと思うビジュアル面も惹きつけられる。撮影に使われたアイクラー・ホームが最大の特徴。1950~60年代に西海岸で建築されたモダン住宅で、平屋であること、中庭がたっぷりあること、リビングは大きなガラス張りで中庭との一体感があること、など設計者・アイクラーのこだわりが。当時は平均的な財力で購入できる設定で、ジェイクが裕福ではないということも象徴しているよう。
物語の大半を占めるジェイク宅のシーンでは、ミラーや調度品、家具などもシンプルだけど平凡ではなく、こんな家に住みたいと思ってしまいます。また、衣装もアジアをイメージにしたメゾンや、アジア人デザイナーのもの、エシカルブランドを取り入れてキャラクターを際立たせています。こういったアジアテイストをはじめ、劇中ではジェイクがお茶のお店を開いていたり、映画『リリイ・シュシュのすべて』(2001)の歌『グライド』が登場するのは、韓国系アメリカ人かつ小津安二郎が大好きであるコゴナダ監督ならではと言えそうです。

東海岸に現存していたアイクラーホームをベースに、撮影用に手を入れた


Aska Matsumiyaさんが手掛けた音楽について

Aska Matsumiyaさんが手掛けた音楽も、どこか懐かしく感じるインテリア、おさえた光と音量で描かれる世界を彩ります。外見は人間と同じ家庭用ロボットが普及するまでになった近未来に、人間味のある音を加えています。
「自然と近未来が調和した映像が良かったです。音楽については、近未来だからこそ自然な音になっているのでは、という話になりました。一度作曲したものをAIに取り込んで、AIが導き出した曲に弦楽器や木琴を加えています。また、UAさんの水色が大好きなので使わせて頂きました。メインテーマの坂本龍一さんは、子どもの時から好きでコンサートなど行っていたので、そんな方とご一緒できるのが人生で衝撃的なできごと! とても緊張したけど、カジュアルでオープンでジェントルマン。音楽家として信頼してまかせてくださいました」(Askaさん)

全世界の家族が参加するファミリーダンスのシーンが楽しい


『アフター・ヤン』TOHOシネマズ シャンテほか絶賛上映中

2021/アメリカ/96分

監督・脚本・編集:コゴナダ 
出演:コリン・ファレル、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H・ミン、マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ、ヘイリー・ルー・リチャードソン 
原作:アレクサンダー・ワインスタイン『Saying Goodbye to Yang』
音楽:Aska Matsumiya
オリジナル・テーマ:坂本龍一

配給:キノフィルムズ
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公式サイト

この記事を書いた人

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