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1/13公開映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』#MeTooの火付け役となった事件に、2人の女性ジャーナリストが迫る【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

執筆者:伊藤さとり

映画 SHESAID その名を暴け

映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は1月13日公開の『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』。キャリー・マリガンは本日1月11日(現地は1月10日)発表のゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネートされており気になるところ。週末の予定に加えてみてください!


実話をもとにした女性のための映画

世界で広まったMeToo運動。「私も性被害を受けた」と口にすることでセクシャルハラスメント被害の多さを伝えるというもの。この活動が広まったきっかけとなったのが、2017年にニューヨーク・タイムズ紙が報じたハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの事件でした。

映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』の主人公のモデルは、実在する女性記者で本作の原作となっているピューリッツァー賞を受賞したノンフィクション「その名を暴け」の著者、ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイー。映画では記者ミーガン(キャリー・マリガン)とジョディ(ゾーイ・カザン)が、数々のヒット作を生むプロデューサー、ワインスタインの性的暴行を取材する中で、多くの壁にぶつかる姿が映し出されます。特に悩ましいのは何十年も悪行は続いているものの、被害を受けた女性たちは権力があり人脈もあるワインスタインの非道な行為を口外することで仕事を失う危険から我慢を強いられ、口止め料を受け取るという苦しい決断を選ばざるを得えない状況だったこと。だって打撃を与える記事にするには実名入りの告発文でないといけない。更にミーガンとジョディは様々な嫌がらせに合いながらも被害にあった女優やスタッフの元に自らの足で赴き、告発することで多くの犠牲者を救えると伝え続けるんです。

驚くべきことに映画には、実際に実名で告発した女優のアシュレイ・ジャッドも本人役で登場、しかもワインスタインがホテルで女性を誘う肉声も使われています。そのことによってこの事件が間違いなく[真実]であると観客に訴える作品になっていました。

映画で描かれている出来事をきっかけに被害者が次々と名乗りをあげ、結果的にワインスタインは強姦罪、性的暴行罪でNYとLAで有罪判決が下され、現在は刑務所暮らし。まさに彼女たちの信念が身を結んだ証と言えます。

更に本作は1/11発表となるゴールデン・グローブ賞助演女優賞(キャリー・マリガン)にノミネートされるなど、多くの映画賞で評価を得ています。しかも映画は女性記者の仕事ぶりだけでなく、彼女たちが「母親」であり、子育てをしながら仕事をしている姿も描かれていました。特にマリガン演じるミーガンが出産後に鬱のようになり、仕事に復帰したことで表情が明るくなっていく姿を映すことで、「女性の幸せは子育てだけではない」というメッセージも受け取れる映画に。しかも監督も脚本家も女性、その根底には女性たちが生きやすい社会を強く願って全世界に向けて作られたのでは? 間違いなく私はそう感じ取りました。

1/13(金)公開『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

【あらすじ】ニューヨーク・タイムズの記者ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は、ハリウッドに君臨する映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの何十年にもわたる性的暴行について調査を始める。取材を進める中で、ワインスタインが過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明。さらに、被害にあった女性たちはそのほとんどが示談を受けており、証言すると訴えられるという恐怖や、当時のトラウマによって声をあげられないままでいた――。問題の本質は業界の隠蔽構造だと知ったミーガンとジョディは、調査を妨害されながらも信念を曲げず、証言を決意した勇気ある女性たちと共に突き進む。そして、遂にサバイバーたちによって数十年にわたる沈黙が破られ、ワインスタインによる悪質な事件の全貌、真実が明らかになっていく。

映画 SHESAID その名を暴け

2022/アメリカ/129分
監督:マリア・シュラーダー 製作総指揮:ブラッド・ピット、リラ・ヤコブ、ミーガン・エリソン、スー・ネイグル
出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、サマンサ・モートンほか
原作:『その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー/著(新潮文庫刊)古屋美登里 / 訳
配給:東宝東和 
© Universal Studios. All Rights Reserved.

公式サイト

この記事を書いた人

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー 伊藤さとり

映画評論・映画パーソナリティ・心理カウンセラー

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邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見等のMCを数多く担当している。また、心理学的な視点からも映画を解説。12月に新著は『映画のセリフで心をチャージ 愛の告白100選』(KADOKAWA)。「ぴあ」、「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、「めざましテレビ」「ひるおび」での映画コーナー等、幅広いメディアで映画を紹介。映画と、映画に関わる全ての人々を愛してやまない映画人。

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